25 December 2023
株式会社SAMANSA
代表取締役 | 岩永 祐一 氏 氏
株式会社SAMANSAが運営するのはショート映画専門VODサービス「SAMANSA」。月額370円で630タイトルのショート映画が見放題のサービスです(2023年11月現在)。
そんなSAMANSAはiOSとAndroidアプリでサービス展開をしていますが、iOS側のポリシー変更により、突然の仕様改善に迫られました。これから成長のためのドライブをかけようとしていた最中に突如として発生したアクシデント。再開発のためには時間も費用もかかる可能性がある。そう判断したSAMANSA代表の岩永さんは、すぐに必要な資金確保に動き、レベニュー・ベースド・ファイナンシング(以下「RBF」)を利用するため、Yoii Fuelに声をかけてくれました。
映画と共に育った岩永さんがSAMANSA開発に至った経緯から、「ショート動画には意外なまでにニーズがあった」と語る理由、そしてYoii Fuelを使った経緯や感想について、聞きました。
岩永 祐一 | IWANAGA Yuichi
株式会社SAMANSA 代表取締役/CEO
鳥取県米子市出身。曽祖父が映画館・映画配給事業を営んでいた影響で、小さい頃からクラシック映画を観て育つ。慶應大学時代はバックパッカーにハマり、40カ国以上を周る。南米の村の軒先で子供達が「アベンジャーズ」を食い入るように夢中で見ているのを目撃し、エンターテイメントの大きな影響力を体験する。大学卒業後はリクルートキャリアに就職し、その後Crevoでの勤務を経て渡米する。
渡米後はUCLA EXTENSIONで映画演出を学び、帰国後フリーとして活動した後、SAMANSAを創業。
SAMANSAでは主に経営、ファイナンス周りの統括を担っている。
── 岩永さんと映画の関わりについて教えてください。
物心ついた時から、映画がすごく好きだったんです。自分が生まれる前の作品も含め『仮面ライダー』や『ドラえもん』の映画をDVDでよく観ていましたし、おじいちゃんの家にあったチャップリンや西部劇のビデオも観ていました。高校生のときには映画やCMめいたものを文化祭用に撮影したりなんかして。
また僕は大学生のときにバックパッカーで、色んな国を訪れていたんです。そんな中、忘れられない出来事がありました。南米の駄菓子屋さんの前にある大きなスクリーンで、子どもたちが『アベンジャーズ』を観ているのを目撃したんです。「映画は国境を越えるんだな」と感じた瞬間でした。
大学では物理を専攻していたのですが、そんな経験もあって次第に映画を将来の仕事にしたいと考えるようになったんです。それでCM制作会社でアルバイトを始めました。
しばらくアルバイトを続けていたら、その会社のプロデューサーと就職の話になりました。それで「この会社に入社したい」と言ってみたんです。そうしたら「ふざけるな」といった内容のことを言い返されまして(笑)。曰く「慶應にまで行って、物理を専攻して、なんでこの業界に来るんだ。ここにはいつでも来れるから、まずはもっと広い世界を見てこい」と。それでアルバイトと同時にインターンをしていたリクルートに就職したんです。
数年働いて「広い世界を見た」と感じたので、再度映像の世界に足を踏み入れることにしました。最初は国内の映像制作のスタートアップに転職したのですが、映像を本格的に学ぼうと決意。ロサンゼルスの映画学校に通うことにしました。
── ロサンゼルスと言えば映画の本場。そこでの生活はいかがでしたか?
カフェに行けば隣で脚本の話をしているなんてことも珍しくなく、本当に映画の都でしたね。また、映画制作環境だけでなく、そこにいる人の性格も日本とは違うように感じました。というのも、ロスの人ってすごくポジティブなんですよ。「俺らは夢を叶えるんだ」みたいな純粋なエネルギーが溢れているんです。みんな自分が一番だと思っているから他人を気にしない。一方で日本は「日本だといいもの作れないね」「経済も落ちてるし」みたいなネガティブさがあるように感じます。
ビザやコロナ禍の都合もあって3年ほどしかいれなかったのですが、ロスは広くて都会で映画の街で、住みやすかったです。世界中どこに住んでもいいと言われたら、今でもロスを選びます。
── 帰国後は、映画制作ではなく起業されていますね。どうして自分で事業を起こしたのでしょうか。
最初は自分で事業を起こすなんて考えていませんでした。ただ帰国後、アメリカには映画に関連する良いサービスがたくさんあったのに、日本にはないことにギャップを感じたんです。それで色んな人に「こういうサービスがあったらいいと思うんだけど、どう思う?」なんて話してみたのですが、「本当に良いサービスなら日本にもうあるはずだよ」「なにか理由があるからないんだよ」なんて、ネガティブな意見ばかりが返ってきました。ただ僕はあまりその意見に納得できなかったんです。「絶対あった方がいい」と確信めいたものがあったので、誰もやらないなら自分がやるかと思って、起業することにしました。
── 数あるアイディアの中から、どうしてSAMANSAを選んだのでしょうか。
いくつか出した事業アイディアの一つがショート映画でした。自分自身がショート映画を制作していましたし、世の中には面白いショート映画がたくさんあるのに、日本ではそれを観る手段が限られています。だったらそういうプラットフォームを日本で作ろうと思いました。
それで、SAMANSAの原型となるアイディアを映画業界やスタートアップ界隈の方に相談してみたんです。でも、やっぱり「本当に必要だったらもうあるはず」「今さら映画のVODなんかやっても、Netflixもあるし上手くいかない」なんてネガティブな反応が多かった。ただそれはあまり気にせず「とりあえずやってみよう」と思ってSAMANSAを始めてみました。
── ネガティブな意見が多かった中で、SAMANSAのアイディアを信じられたのはなぜでしょうか。
ユーザーのリアクションを直で感じていたからですね。テスト段階のときから面白いサービスだと言ってくれる人たちがいましたし、TikTokでバズっていたりと、ユーザーは最初から反応してくれていました。むしろ、僕らが思っている以上にニーズはあるんだなと感じたくらいです。
── 想定よりもニーズがあったんですね。
そうですね。長編映画をあまり観ないという方でも、ショート映画なら観たいという方が多いのは意外な発見でした。確かに「長編映画は観ないけど、20分のドラマやアニメを観る」という方は世の中にたくさんいます。そういった方々にショート映画を届けられれば、もしかしたら長編映画以上の産業になる可能性すらある。SAMANSAを始めてから、そう思うようになりました。
── それでSAMANSAのリリースに至ったのですね。
はい。改めて紹介すると、SAMANSAは20分以下の映画作品だけを集めたショート映画専門のVODサービスです。コンテンツとしては10〜20分程度のものを掲載しています。
(画像提供:SAMANSA)
ユーザーの傾向には大きく2パターンあって、まずは映画が好きな方。平日は仕事して帰ってきたら時間がなくて2時間の映画は観られないけど、10〜20分なら寝る前に観られるという方です。もう一つは、普段は映画をあまり観ない方。2時間映画はそもそも長くて観ていられないけど、10〜20分なら観られるという方ですね。
── ユーザーは自宅でSAMANSAを観るのですか?
ドラマや長編映画は家で観る方が多いかもしれませんが、SAMANSAは自宅だけでなく、通学・通勤中に観るという方も少なくありません。
(画像提供:SAMANSA)
── 配信映画数は11月時点で630タイトル。どのようにコンテンツを増やしているのでしょうか。
配給会社と契約して一気に増えることもありますが、ショート映画は個人が権利をもっていることも多いので、地道に一人ひとりのクリエイターに直接連絡を取って、作品掲載につなげていくケースが多いですね。現在は欧米の作品の取り扱いが多いのですが、日本の作品も掲載準備を進めています。
── 連絡を受けたクリエイターはどのような反応をしますか?
そもそも、映画を作ったからには大勢の方に観ていただきたいと思っています。でも欧米の方にとっては、日本やアジアで作品を観てもらう手段が少ないんです。翻訳一つとってもちゃんとした日本語や現地語にするためには手間もお金もかかるし、YouTubeにアップしたからって観てもらえるわけでもありません。そういった中でSAMANASAは、ちゃんと翻訳もしますし、場合によっては宣伝もして、日本で観てもらえるように準備します。そういうことを伝えると非常に喜んでくれますね。
またSAMANSAでは売上に応じてクリエイターへの収益を分配したり、オリジナル作品を制作してもらうという形でクリエイターを金銭面からも支援しています。ショート動画で稼げているクリエイターは少ないので、そういった観点からも喜んでいただいていますね。
── それでは、ファイナンスの話も聞かせてください。これまでに利用した資金調達手段にはどのようなものがあるでしょうか。
2021年に会社を設立し、同年、2022年、2023年にベンチャーキャピタル(以下「VC」)から資金調達を実施。また銀行融資も利用しています。過去には他社でRBFを利用したこともありました。
── Yoii Fuelを利用したきっかけを教えてください。
SAMANSAはiOSアプリでもサービス提供しているのですが、あるとき不具合が発覚したので、それを直そうと修正申請したんです。ところで、同アプリでは以前から、「ログインしてから課金・登録する」というフローを採用していました。ですが修正申請の際に、Appleから「課金・登録してからログイン」しなくてはダメだと急に通達されたんです。これを直さない限り他の修正も受け付けられないと。
仕方がないのでフローを変更することにしたのですが、そのためには相当の時間と費用が必要なことが発覚しました。それでキャッシュを上積みして安定させておきたいと考えていたら、税理士からYoiiを紹介してもらったんです。
無事資金調達でき、キャッシュがあったことで安心感は増しました。今後この資金は、新機能の開発やマーケティング施策など、ユーザーを伸ばしていくためのブーストに投下する予定です。
── Yoii Fuelを使った感想を教えてください。
コミュニケーションがすごく良かったです。事前のヒアリングや着金後のやりとりもすごく丁寧かつ積極的で、気持ちの良いコミュニケーションがずっと続いたのが良い体験でした。
── ありがとうございます。システムの使い勝手はいかがでしたか?
使いやすかったですね。資料を追加で作成するような苦労もありませんでしたし、提出もスムーズにできて良かったです。資料が足りないときには「こういう資料が足りないです」とすぐに連絡いただけたのも助かりました。こういったシステムも先述したコミュニケーションも、丁寧なのに早いという印象です。
── SAMANSAは過去に他社のRBFを使った経験もあると伺いました。差は感じましたか?
まず、(利用した時期が異なるとはいえ)手数料率や期間といった条件面が優れていました。ただ、それ以上に営業を受けた体験が良かったです。僕も過去にリクルートに所属していたので、営業のなんたるかはそれなりにわかっているつもりですが、その観点からしても本当に良かったんですよ。何回かオフライン・オンラインでコミュニケーションを取りましたが、決して営業活動がいやらしいわけでも煩わしいわけでもなく、むしろ誠実さが伝わってきて、Yoiiを使いたいという気持ちにさせてくれました。
── ありがとうございます。嬉しいです。我々もスタートアップなので、皆さんと一緒に成長していきたいと思っています。
── 最後に、SAMANSAの今後の展望を聞かせてください。
2023年12月から、韓国、タイ、インドネシア、英語圏にもサービス展開を始めています。SAMAMSAは国内展開において、ショート映画という特性を活かして予告動画をSNSでバズらせて集客するというマーケティング手段をとってきました。海外でも同様に展開していこうとしているのですが、どういう動画がバズるのかは地域性があるので、色んな側面でのローカライズが必要だなと感じており、これはSAMANSA社にとって新たなチャレンジとなっています。
また、僕は長編映画はレガシーで伝統的なものになっていくんじゃないかと思っているんです。歌舞伎や演劇みたいな「ちょっとお金をかけて映画館で観るもの」と認識されるんじゃないかと。一方スマホで観るコンテンツは、どんどん短いものになっていくはずです。そういう世界においてショート映画は、長編映画と同じかそれ以上に広まり得るものだと思っています。「最近みて面白かった映画」という話題で、長編ではなくショート映画のタイトルが挙がる世界を作るのがSAMANSA社の理想です。ショート映画で稼げているクリエイターはほんの一握り。もっともっと頑張って、ショート映画で稼げるクリエイターを増やしていきたいです。
── 岩永さん、本日はありがとうございました。Yoii FuelでもSAMANSAの成長を応援させてください。
よろしくお願いします。ありがとうございました。
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