17 January 2024
株式会社クロスビット
代表取締役社長 | 小久保 孝咲 氏 氏
株式会社クロスビット(以下「クロスビット」)が提供するらくしふは、LINEを活用したシフト管理SaaSです。シェアを拡大し、シフト管理を要するあらゆる業態で使われています。
そんなクロスビットは、Yoii Fuelを通してレベニュー・ベースド・ファイナンス(以下「RBF」)を実施。ところがYoii Fuel利用当時、同社はベンチャーキャピタル(以下「VC」)からの資金調達も内定しており、必ずしもRBFを利用しなくてもいい状況でした。
どうしてクロスビットは、VCからの資金調達前にRBFを利用したのでしょうか。らくしふやその前提となるシフト管理の課題、将来像まで、同社代表の小久保さんに聞きました。
小久保 孝咲 | KOKUBO Kosaku
株式会社クロスビット 代表取締役社長
早稲田大学政治経済学部卒。 人材系企業にて人材紹介、広告営業に携わり、「人の生み出す価値」に惹かれる一方、世の中の非効率性とHR関連のデータ欠如を痛感。 日本の「生産年齢人口の減少」と相まった国力低下に危機感を感じ、「大きな課題を解決することに人生の時間を最大限使いたい」という想いから、2016年4月に株式会社クロスビットを設立。 「働き方の抜本的見直し」「労働需給の全体最適化」を行うことで Japan as No.1 を達成できるはずという考えから、第1歩としてLINEを活用したシフト管理SaaS【らくしふ】をリリース。
── 「らくしふ」はシフト管理のためのサービスです。まずはシフト管理の課題について教えてください。
現代ではライフスタイルと同様、24時間営業や副業、オンデマンドワークなど、ワークスタイルも多様化が進んでいます。その管理に必要なのが「シフト管理」です。ただこのシフト管理は20年間ずっと変わっておらず、未だに紙やエクセルで管理されていることがほとんど。そのため、シフトの調整は大変で、最終的に人件費がどうなるかはわからず、データの活用も困難です。
国内には、飲食、小売り、ホテル、医療、交通、介護業界など、シフト型勤務の事業所様が167万あると言われており、その対象となる従業員数は2000万人を超えると言われています。これだけ影響の幅が広いシフト管理であるにもかかわらず、デジタル化が進んでいないのです。
── シフト管理はやはり大変なのでしょうか。
シフトを組むのは拠点長、店長、塾長といった方々ですが、彼らは月の約10%、月間200時間働くとして20時間をシフト作成に費やしているといわれています。単にシフトの穴を埋めるだけではなく、勤務時間や休憩時間は法律を守らなくてはならないですし、繁閑やベテラン・新人のバランスを考えたりすることも必要です。つまり、シフト管理というのは変数が多くて複雑で大変な作業なのです。
── 働き方や業界や地域によって差はありますか?
らくしふはシフト管理があるビジネスならほとんど使えて、様々な業界で使われてきました。その経験からすると、採用難易度と柔軟性は逆相関の関係にあると言えます。
重労働で採用が難しいと言われるホテルや介護業界、また夜間に学生が少ない銀座や有楽町、豊洲といったエリアでは勤務形態が比較的自由な傾向にあります。逆にアパレルやカフェは採用が比較的しやすく、またスーパーマーケットは地域の主婦を採用しやすいため、比較的固定時間の勤務形態を採用する傾向が強いです。
こういったシフト管理の問題を解決し、事業者の工数削減と効率化に寄与するのが、クロスビットが運営する「らくしふ」です。シフト管理を要するあらゆる業態で活用できるLINEを活用したサービスで、スタッフのシフト希望回収からシフト作成、労務管理、予実管理・人件費などの可視化・最適化を実現します。
らくしふを使えば事業者は、売上や来客数などの予測、曜日や業務量などに応じた人員配置が可能となります。スタッフが提出したシフト希望から、何曜日の何時にどのくらい不足しているかといった情報も算出し、他の店舗で余っている人員検索なども可能です。
── らくしふの派生サービスも運営していますよね。
らくしふから得られたデータを活かす形で、働きたい曜日×時間帯でバイトを探せる「らくしふワーク」や、パート・アルバイトに特化したクラウド人事労務「らくしふ労務管理」も運営しています。
── これらのサービスを使うことで、業務が効率化されるんですね。
その通りです。しかしクロスビットが目指しているのは、業務効率化に留まりません。我々は働く体験すべてを向上させたいと思っています。
例えば、働き手は「週に1回しか働けずに仕事がない」はない方が良いですし、時給は1000円より2000円の方が良い。振込は1ヵ月ごとではなく即日もらえる方が良いですし、仕事に必要なスキルは早く獲得できた方が良い。事業所側としても「水曜日のシフトが埋まらないため時給を倍にしてでも採りたい」ときには効率よく人を集めたいですよね。こういったことを、順々にすべて解決していきたいと思っています。
また将来的には、らくしふのデータを使った新しい事業展開も仕掛けていきたいです。例えば「時給は高いけれど全然シフトに入れない」「店長がかなりいい人」「ほとんど人が辞めていない」ような、働いてみないとわからない情報が集まる採用システムを作れるのではないかと考えています。
そうすることで事業所はより良いサービスを届け続けられる。働き手はそのような魅力的な職場とより簡単かつ頻繁に出会うことができ、自分の能力が必要とされる職場で適正な報酬や機会を得られ、ワーキングスタイルにも新たな選択肢が生まれる。その事業所と働き手がより良いサービスを届けることでサービスを受け取る人の体験も向上し、さらに働き手とその家族の時間もより充実した時間に変わる、そのような社会を実現したいと思っています。
── らくしふをリリースしたのは2017年。シフト管理ができるツールは既に世にあったのではないでしょうか。
おっしゃる通りです。どうして勝てると判断したかというと、ユーザーにヒアリングをした結果、既に世にあったプロダクトは「契約していてもあまり使われていない」ことが判明したからです。なぜかと聞くと「現場様に馴染みにくい」からだと。「使い慣れたら楽だが、使い慣れるまでのコストが高い」「エクセルのほうが楽」なんだそうです。そうであれば、使いやすいシステムを作れば勝負できるはず。そう考えてらくしふの開発を始めました。
── 現場が使いやすくなるサービス開発の秘訣を教えてください。
開発チームは、現場の方々がらくしふをどう使うかを徹底的に意識しながら開発しています。それが現場感のある機能開発に繋がっているのです。例えば勤務表にメモを書けるようにしたり、シフト管理時に特定のグループや役割ごとに分ける機能を備えたり、店長とエリアマネージャーでは見たい情報は異なるためログインしたときに出る情報を変える仕様は、現場を丁寧に観察した結果開発されました。ユーザーの話を聞きながら、見ながら、必要なことは全部やっていくつもりです。
小久保さんが抱えているのはらくしふのキャラクターであるぺんぎん
── では、ファイナンスの話も聞かせてください。らくしふはいわゆるホリゾンタルSaaSですが、一般的なそれと比べて、お金の使い方に特徴はありますか?
上場しているSaaSスタートアップに比べると、セールスやマーケティング人員の割合が低くて、開発人員が多くなっています。
── セールス・マーケティングの比重が低いというのは意外でした。
クロスビットでは狙っているセグメントがはっきりしていることもあって、ABMに近しいマーケティング手法を取っているんです。チャネルとしては展示会や電話営業が多いですね。
── これまでの資金調達手法を教えてください。
VCさんからのEquityでの資金調達は2020年に実施しています。また借り入れもしています。
── RBFを知ったきっかけを教えてください。
クロスビットは、VCさんからの資金調達をするために動いていました(※)。ただ基本的に成長している会社なら時期が後ろ倒しになればなるほど売り上げが上がりバリュエーションも上がるはずなので、スタートアップに有利になります。とはいえ、新規調達時期を後ろ倒しにすればするほどキャッシュ残高が減り企業としての安全性は下がっていきます。
(※)2024年1月10日に第三者割当増資による約9億円の資金調達を発表
ではどうしようかという話を株主との定例会議でしていたところ話題に登ったのが、RBFでした。この時点でRBFのことは知らなかったのですが、仕組みは理解できましたし、要検討だなとすぐに判断。すぐにクロスビットの株主で、YoiiのVCプログラムにも参加しているSalesforce Ventures様から、Yoiiを紹介していただきました。
── バリュエーションを上げるためにも、キャッシュを手元に置いておきたかったということですね。Yoii Fuelは銀行融資と比較すると融通が効きやすいので、このような使い方もよくしていただきます。RBFをご存知なかった方は、融資と比べたときの手数料率の高さを気にする方もいるのですが、そういった心配はありませんでしたか?
Yoii Fuelに限らずですが、確かにRBFは、銀行融資と比較すれば手数料率が高いのではないかと思います。しかし先述したように、VCさんからの資金調達の時期を遅らせ、バリュエーションを引き上げて、その結果調達金額を大きくできるのであれば、このコストは十分にペイできると考えました。
確実に成長している会社なら、半年で数十%時価総額が伸びてもおかしくありません。タイミング次第でRBFを用いてVCさんからの資金調達時期を遅くし、バリュエーション、ひいては調達金額増大を狙うのは理に適っていると思います。
── 他のRBFとの比較もされたと伺いました。その上でYoii Fuelを選んだ理由を教えてください。
RBFを提供している数社から話を聞きましたが、その中でも色んな面で、Yoiiが最も良いと感じました。条件面では「手数料率」と「早さ」。資料を出し終えてから1週間かからずに見積りが出てきたりと、レスポンスの早さには驚きました。同じ情報を出したときのスピードがYoiiは圧倒的に早かったのです。コミュニケーションがシンプルだった点も好印象でしたね。
── 実際に手続きしてみた感想を教えてください。
非常に楽で、ストレスは一切感じませんでした。手続きのスピードも早くて、面談をしてから2週間ほどで着金に至り、早くて驚きました。
── 最後に、クロスビットの今後の展開を教えてください。
toB SaaSは、特定の領域だけでなく、関連領域すべてを抑える戦略を取る必要があると思っています。らくしふも今後はそのように動く必要があり、実際に、機能を拡張したりと既に動いていることもあります。
とはいえ、すべてをゼロから構築するのでは時間がかかりすぎる。とすると、将来的には粛々とサービスを伸ばすだけでなく、他のサービスと連携したりM&Aという選択肢をとる必要性が生じるでしょう。
クロスビットのミッションは「全ての働く人に優しい社会を創る」。シフト管理を起点として、働く人に役立つ経済圏を創っていきたいです。
── Yoiiとしても引き続きクロスビットを応援していきます。本日はありがとうございました。
よろしくお願いします。ありがとうございました。
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