RBFを使って、冬商戦の運転資金を用意

    25 October 2023

    RBFを使って、冬商戦の運転資金を用意

    ラヴィストトーキョー株式会社

    代表取締役  | 唐沢 海斗 氏

    ラヴィストトーキョー株式会社(以下「ラヴィストトーキョー」)は、廃棄されたリンゴを使ったアップルレザーブランド「LOVST TOKYO(ラヴィストーキョー)」を販売しているスタートアップです。

    同社の商品は季節性のある商品の特性上、適切なタイミングで運転資金を確保することが重要な経営課題でした。そんな中ラヴィストトーキョーは、銀行やベンチャーキャピタル(以下「VC」)からのファイナンスと併行し、Yoii Fuelを通してレベニュー・ベースド・ファイナンス(以下「RBF」)を利用し、資金調達をしています。

    LOVST TOKYOのビジネスモデルや、資金調達におけるRBFの位置づけ、Yoii Fuelを利用した感想など、ラヴィストトーキョー代表の唐沢さんに伺いました。

    ※以下、会社を指す場合は「ラヴィストトーキョー」、ブランドを指す場合は「LOVST TOKYO」と表記します。

    廃棄リンゴをアップサイクルしたヴィーガンレザーブランド

    ── LOVST TOKYOについて教えてください。

     

     ラヴィストトーキョーでは、廃棄されたリンゴをアップサイクルしたバッグや財布などを展開するライフスタイルブランド「LOVST TOKYO」を運営しています。

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    唐沢 海斗 | KARASAWA Kaito

    ラヴィストトーキョー株式会社 代表取締役

    1991年生まれ、栃木県出身。米国にある州立大学を卒業後、大手人材派遣会社に勤務。2018年、日本初ヴィーガンファッションの輸入販売事業で起業。 2021年、廃棄りんごから生まれた「アップルレザー」のような植物由来のレザーブランド「LOVST TOKYO」を展開。畜産業由来の社会解題をファッションの力で解決することを目指して活動している。

    アップルレザーは、リンゴジュースを作る際に廃棄されていた絞りかすを乾燥させてパウダーに分解し、人工レザーの原料であるポリウレタン樹脂と合成した植物由来のヴィーガンレザーの一種です。廃棄リンゴ由来の天然成分を加えて石油系樹脂の原料の割合を低くすることで、動物に優しいだけではなく、環境にも配慮したサステナブルな製品を実現しています。一般的な人工レザーと同様、非常に軽量で水に強いのが特徴で、人気の商品はアップルリュックや、手頃な価格で買えるキーホルダーです。

    2021年にプレマーケティング的にクラウドファンディングを実施し、2022年にリブランディングして本格的にブランド展開を開始しました。

    アップルレザーという商材もあって、初期のお客さまに多かったのは、サステナビリティやエシカル消費、動物福祉などに興味のある方々です。しかし最近はそれらに囚われず、純粋にデザインを気に入って購入いただけるお客さまが増えてきています。

    こうやってブランドを取り巻く環境も変わっているので、お客さまの声を聞きながら、商品やブランドをアップデートし続けているのもLOVST TOKYOの特徴です。

    とはいえ、LOVST TOKYOのコアバリューはあくまでヴィーガンやサステナブルといった思想へのリスペクトなので、それは揺るぎません。ただいくらそこに共感しても、気に入らない商品や高額なファッションアイテムを消費者は購入しない。自分が日常生活で使うイメージが湧くか、自分にメリットがあるか、そういった訴求を消費者へ徐々にできてきたからこそ、色んな方に購入いただいていると認識しています。

    ちなみにお客さまの8〜9割は女性ですが、男性でも使える商品はたくさんありますよ。実際僕もウォレットや名刺入れを使っていますしね。

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    「この素材を使わせてください」。素材調達のためにイタリアへ

     

     ── ヴィーガンに興味をもったきっかけを教えてください。

     

     僕がヴィーガンという価値観に出会ったのは、アメリカに留学していたときです。正直当時は、そんなにポジティブな印象があったわけではありません。ただ大学を卒業してシリコンバレーで生活していると、ヴィーガン対応のレストランに遭遇するなんて珍しくもないんです。それでヴィーガンはライフスタイルとして一般的に受け入れられているものだと気づきました。また当時は、ちょうどプラントベース市場が注目されてきた時期でもあります。そんな経験もあってヴィーガンに興味を抱きました。

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    それでヴィーガンや環境について調べていたら、温室効果ガスの14.5%が畜産業由来だと知ったんです。地球全体では人口が増加しているので、畜産業は安定成長産業になっている。温室効果ガスが世界的な問題となっている中で、なにか見直すきっかけや考えるきっかけを作っていかないと、この動きは止められないのではないかと感じました。僕自身がヴィーガンに対してネガティブからポジティブに変わってきたこともあって、何か伝えられることがあるのではないかと思ったんです。

    でも、いきなり「今日からお肉を食べないでください」と言われたら、生活への影響が大きいじゃないですか。一方でファッションならそれほど大きな影響はありません。元々起業には興味がありましたし、それでヴィーガン×ファッションの分野で起業することにしたんです。

     

     ── どうしてアップルレザーという商材を選んだのでしょうか。

     

     動物性ではないファッションアイテムというと「ヴィーガンレザー」を思い浮かべますよね。でもその原材料である合皮や人工皮革に着目すると、これらは石油由来のものなんです。なので、ヴィーガンレザーは動物には優しいけど、石油を使っているという意味では環境に優しいというわけではありません。

    この問題を解決できないか。そう思って色々調べている中でみつけたのが「アップルレザー」と呼ばれる植物由来レザーでした。この素材を作っているのはイタリアのメーカーだったので、実際に目にしたくてイタリアに飛んだんです。それで「この素材を使わせてほしい」と交渉したところ、イタリア産アップルレザーを使わせてくれることになりました。これがLOVST TOKYOの始まりです。

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    その後、イタリア産の素材を使ってLOVST TOKYOを運営していたのですが、次第にお客さまから国産の商品を求める声が高まってきました。僕自身にもその思いはありましたし、なんとかしたいなと思っていたところ、偶然青森県庁の方とお話する機会があって、「青森のリンゴでアップルレザーを作ってほしい」という話になったんです。国内でリンゴジュースを生産するにあたって搾りかすが出るので、それを利用できないかと。それで青森のリンゴを日本の合皮生産工場にもちこんで、新商品の開発に取り掛かりました。

    少しずつ研究開発を重ね、現在は国産のリンゴを使うことで、従来の人工レザーを作るのに比べて約25%石油系樹脂の使用を抑えられるようになっています。この割合の分だけ、LOVST TOKYOの商品は動物にも環境にも優しいバイオレザーになっているということです。現在は25%ですが、研究開発も進めていて、将来的にこの割合をどんどん高めていきたいと考えています。

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    RBFの利用は、冬商戦に向けた運転資金確保のため

     

     ── LOVST TOKYOは、多くのブランドがそうであるように、中小企業としても活動できたかと思います。その中で、どうして急成長を求めるスタートアップとして活動することを選んだのでしょうか。

     

     端的に言うと、ラヴィストトーキョーは上場を目指しているからです。

    今、色んな方や会社がサステナブルな事業に挑戦されていますが、世間からはまだまだ「ちゃんと儲かる」マーケットだと認識されていないと考えています。しかしこれまでLOVST TOKYOを運営してきた経験からすると、決してそんなことはありません。それを証明するための一つの手法として、上場したいんです。

    「サステナブル事業を展開するラヴィストトーキョーが上場した」「サステナブルはちゃんと儲かるんだ」とマーケットに認識してもらうことが、ひいてはサステナブル市場を盛り上げるきっかけになる。そうしてプレイヤーが増えて良い競争ができるようになれば、より洗練された商品を市場に届けられるようになって、ヴィーガンや環境保護が進む。そうやってこの市場を盛り上げたいんです。でも、中小企業モデルだと、上場するためのスピード感や資金調達、成長カーブの実現が難しい。それでスタートアップ式のビジネスモデルを選びました。

     

     ── これまではどのような資金調達手法を採られていますか?

     

     VCと個人投資家から2回に渡るエクイティでの出資を、銀行からは融資を受けています。

     

     ── その状況でRBFを検討されたんですね。RBFという資金調達手法はご存知でしたか?

     

     単語自体は聞いたことはあって、銀行融資と比べると手数料が高いんだろうな、というイメージはもっていました。

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    ── そんな中、どうしてRBFを使おうと思ったのでしょうか。

     

     我々のようなビジネスモデルでは仕入代金の支払いが先に発生するので、運転資金の管理は重要な経営課題になります。

    しかも、LOVST TOKYOにとっては非常に大事ということもあって、素材だけはOEMを通さずメーカーから直接仕入れているのですが、その分キャッシュアウトは先に発生します。またLOVST TOKYOはレザー商品のため、12月付近が最も売れる季節性のある商品で、そこに向けてキャッシュを増やしておきたいというニーズもありました。もし手元資金が不安だったら、人気商品の追加発注に二の足を踏んで機会損失が発生してしまうかもしれません。

    そんな状況だったので、まずは銀行融資を検討しました。しかし我々は創業初期のスタートアップ。当然赤字で、せいぜい100〜200万円しか借りられず、必要資金には全然足りませんでした。それでどうしようかと考えているときにRBFのことを思い出し、某スタートアップイベントでお会いしたYoiiに連絡を取ったんです。

    半年分の運転資金を確保。VC調達を有利に進めるためにもRBFは役立つ

     

     ── ありがとうございます。Yoii Fuelを使ってみた感想を教えてください。

     

     使って良かったです。キャッシュが厚くなったので、今は安心して事業に取り組めています。現時点で(半年先の)年内商戦を戦えるキャッシュがあるので、単純計算で運転資金が半年以上確保できた計算です。

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    また実は現在、VCから次の資金調達も検討しているんです。もしキャッシュが少ないと、切羽詰まって希望よりバリュエーションを下げてでも調達しなければいけない可能性もあります。そういうリスクヘッジとしてもYoii Fuelを使ってよかったですね。

    ちなみに、ラヴィストーキョーはtalikiという社会起業家に特化したVCから資金調達をしています。talikiがYoii Fuelと連携していることもあって、心配していた手数料率についても想像より安くてよかったです。

    また審査の早さにも驚きました。銀行などではD2Cの説明をするだけで大変ですし、やはり実績をベースにして融資する・しないの判断をしていると感じます。ですがそもそも実績を作るためのお金がないんですよ(笑)。その点、Yoii Fuelの担当者には最低限の説明で済みましたし、資金調達全体の時間も2週間ほどと非常に早く済みました。

    総じて、周りの起業家にお薦めできるサービスだなと感じています。Yoiiに助けていただいたので、これからどんどん実績を作り、リスクをとって次の挑戦に挑んでいきたいですね。

     

     ── 恐縮です。Yoii FueではすでにD2Cサービスの審査実績が溜まっているので、審査に慣れているという面はあるかもしれません。最後に、LOVST TOKYOの今後の展開を教えてください。

     

     まずはカテゴリーをどんどん増やしていきたいです。例えば現在Airpodsのケースを販売しているのですが、次はApple Watchのバンドを作りたいと考えています。Apple × Appleですね(笑)。他のブランドとビジョンやバリューを共感しあうことができればコラボ商品なども作っていきたいです。

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    また常設のショールームの用意も進めています。お客さまからしても商品を実際に見たいという方は多いと思いますし、ビジネス的にもショールームの存在によってライフタイムバリュー(LTV)がどう変わるのか検証したいです。

    今はアップルレザーがほとんどですが、ワインの絞りかすから作ったグレープレザーの商品の展開も進めています。日本でもマッシュルームレザーを採用する老舗ブランドもありますし、国内の市場も盛り上がってきました。

    とはいえ、今LOVST TOKYOは国内初のアップルレザーを展開したブランドです。まずはリンゴ×サステナブルで市場の第一想起を取りにいきたいです。

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    ── 応援しています。一緒に頑張っていきましょう! 本日はありがとうございました。

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