30 November 2023
株式会社ハグカム
代表取締役/CEO | 道村 弥生 氏 氏
株式会社ハグカム(以下「ハグカム」)は、子ども向けオンライン英会話スクール「GLOBAL CROWN」を運営するスタートアップです。「教育は継続が最も大事」という視点から考え抜かれた顧客体験や、狭き採用率をくぐりぬけた先生たち、細かなカリキュラムなどを武器に、成長を続けています。
そんな中、次の資金調達の準備を始めたハグカムが選んだ方法がレベニュー・ベースド・ファイナンス(以下「RBF」)でした。他社とも条件を比較しYoii Fuelを選んだハグカムですが、その最大の効能は意外にも「未来に目を向けられるようになったこと」だったそうです。
驚異的な継続率を達成しているというGLOBAL CROWNの事業内容や、Yoii Fuelを使った感想を、道村さんに伺いました。
道村 弥生 | MICHIMURA Yayoi
株式会社ハグカム 代表取締役/CEO
1984年3月生まれ。明治大学商学部卒。両親祖父母が教員という教員一家で育つ。幼少期はアレルギー体質で引っ込み思案だったが、両親の好奇心を育む教育で前向きになれたという原体験から教育に興味を持つ。新卒でサイバーエージェントに入社。教育関連の子会社経営や新規事業開発などを経験したのち退社し、2015年に「ハグカム」を設立。「思考は現実化する」を座右の銘に、経営者・教育者・1男1女の母という3つの目線から子どもの好奇心を育む教育の提供を目指している。
── ハグカム社の事業について教えてください。
ハグカムが運営しているのは、子ども向けオンライン英会話スクール「GLOBAL CROWN」です。「たのしい。つづく。すきになる。」をキャッチコピーに掲げ、学力向上というよりは子どもが「夢中になれる」ことをサービスの主軸に置いています。
対象は3〜12歳で、ボリュームゾーンは5〜7歳。toCとtoBの両面で展開していて、前者は主に都市部の家庭向け、後者は地方の教室向けに提供しています。
なぜ幼少期向けに提供しているのか。それは3歳から小学校生活を過ごす12歳までが、子どもの人間性を形成する大事な時期だからです。このタイミングで好きなことにどんどんのめり込み、学びを習慣化をしてもらいたいという考えが、ハグカムの根幹にはあります。
GLOBAL CROWNの体験はすべてアプリ内で完結します。レッスン時間になって子どもがアプリを起動すると先生が画面の向こうで待っていて、レッスンが開始されます。
先生は「子どもにモテるオンライン講師」という独自の基準を満たした日英バイリンガルの方々で、子どもが楽しめるようにレッスンを提供します。レッスンにはゲーミフィケーションを用いたりと、楽しく学べる趣向を凝らしました。
レッスンが終わったら評価が届き、後から保護者が記録をチェックできるようになっています。
レッスンのカリキュラムは、すべて自前で作成しました。オンラインで、会話を中心に、頻度高くレッスンできるカリキュラムは世の中にはほとんどないのではないかと思います。
AIを使った発音チェックなど、自習教材も豊富に用意しており、レッスン外でも学習できるようにしています。
GLOBAL CROWNでは32段階のレッスンカリキュラムや自習用AI発音チェックを用意
── カリキュラムは32段階のレベル別で、細かく設定されているんですね。
はい。英検や学習指導要領、世界基準のCEFR(セファール)という語学の水準と照らし合わせて、どの単語やフレーズをどのレベルで学ぶのか、すべてカリキュラムに落とし込みました。
これだけカリキュラムが細かくてちゃんとしていると、先生たちはレッスン内容自体に気を回さなくてよくなり、子どもとのやりとりに集中できるようになるんです。
保護者対応も先生ではなくハグカムが行いますし、先生は子どもとのレッスンに集中できる体制を整えています。
── AIが発音をチェックしてくれるんですね。
AI発音チェック機能はカリキュラムのレベルアップ要件になっていることもあって、かなり使われています。
GLOBAL CROWNの生徒のボリュームゾーンは5〜7歳なのですが、このくらいの年齢は羞恥心も薄いですし、間違いも気にせず話してくれるので、この年代のうちに発音を学んでおくのは非常にいいことですね。
── レッスン時間を固定しているのはなぜでしょうか。
大人向けのスクールでは、本人の空き時間に予約するというサービスが多いように思いますが、GLOBAL CROWNは子どもに学びの習慣をつけてもらうという目的もあり、曜日・時間を固定しています。とはいえ、柔軟に振替ができる体制は整えています。
── 先生にはどのような方が多いのでしょうか。
GLOBAL CROWNではサービス提供当初から、日本語と英語のバイリンガルの先生を採用してきました。2023年11月現在では、400名超の方が先生として活躍してくれています。
採用からレッスンまですべてオンラインで対応できるということもあって、先生の多くはバイリンガルのスキルを活かして副業で働いてくれている社会人や学生です。
GLOBAL CROWNの先生になるためには狭き門をくぐらねばならず、その採用率は15%程度です。大事なのは教えるスキルの高さではなく、GLOBAL CROWNに共感してくれて、幼少期の子どもに英語を教えてあげたいという思いを抱いてくれていること。単に「稼ぎたいから」「リモートで働きやすいから」といった方が採用されることはありません。
また講師として採用されるためには、「子どもにモテる」といった要素も必要になってきます。というのも、GLOBAL CROWNはオンラインでレッスンを提供するので、画面越しですべてを完結させる必要があり、テンションを上げて身振り手振り、子どもために1分たりとも無駄にしないという気持ちがないと、満足度を上げられないからです。
先生は上写真のように、身振り手振りを交えてレッスンをします
逆に、これまでの講師の経験の有無などは必ずしも必要ではありません。先述したようにGLOBAL CROWNのカリキュラムは細かく設定されていますし、教え方のトレーニングをしていくので、上記の基準を満たしていただければ未経験でもしっかりと楽しくレッスンができる仕組みになっているからです。
── オンラインで英会話を学ぶニーズは高まっているのでしょうか。
新型コロナウイルスの影響もあって、近年はオンライン英会話の需要が高まっています。
とはいえ、オンラインでもオフラインでも、英会話事業の重要な指標は「継続率」です。
オンラインは継続率が特に低いと言われていますが、GLOBAL CROWNの1年継続率は現在約80%を達成。オフラインの英会話教室が70%程度と言われていることを考えると、かなり高い水準を誇っています。
継続率の高さの秘訣は、カリキュラムや使いやすいアプリといった要素はもちろん、「スチューデントサクセス」という観点から、子どものモチベーションを上げる仕組みや保護者向けの機能提供などのコミュニケーションを大事にしていることです。
先生の質を高めるだけでなく、受けられなかったレッスンを柔軟に振り替えられるようにしたりと、システム的にも生活習慣に入り込み、満足度を上げることに注力してきました。また、先生は1レッスンあたり30分の時間を使うのですが、その内訳はレッスンが20分で、残りの10分はレッスン記録をつけ、引継ぎ内容をデータに残し、子どもへのメッセージを書いて保護者に連絡することに費やします。こういった活動も満足度や継続率の向上に繋がっています。
ところで、子どもの英語教育の満足度にはある特徴があるんです。最初は、保護者の「英語に楽しく触れてほしい」「英語を好きになってほしい」という気持ちから、子どもを英会話スクールに通わせます。
ですが半年ほど経つとと欲が出てくるのか(笑)、「もうちょっと話せるようになってほしい」「続けたら話せるようになるのか」ということを気にするようになってくるんです。それでこのタイミングで自習教材やレベルアップテストなどを勧めていくと、だんだんと満足度が高まり、結果として継続率も上がっていきます。
── レッスン自体に、満足度・継続率を高めるための秘訣がありますか?
ハグカムでは、好奇心を習慣化させるシステム・オペレーションを「夢中メソッド」として体系化しています。これは子どものモチベーションを維持し、保護者の負担をなくすことで学びの習慣化を実現するものです。
ハグカムでは5つの観点から「夢中メソッド」を作成
── 夢中メソッドはGLOBAL CROWNの事業を進める中で体系化したのでしょうか。
その通りです。コロナ禍に陥った2020年、あらゆる業界でオンラインサービスの需要が高まったものの、すぐにその需要は蒸発したという話をあちこちで耳にします。ですがGLOBAL CROWNではコロナを契機に入会された方々が、その後ほとんど退会しなかったんです。
長くサービスを使っていただきたいと思って開発しているのでそれ自体は評価を得たようで嬉しかったのですが、この時点では何が理由で継続率が高いのか、しっかりと言語化できていませんでした。
それで改めてまとめたのが「夢中メソッド」です。一つひとつは特別に目新しいわけではないのですが、5つの要素が絡まりあってシステムとオペレーションに落とし込まれている点が、ハグカム固有のノウハウとなっており、模倣困難性を生み出しています。
── それではYoii Fuelを使った感想などを聞かせてください。Yoii Fuelはどのように知りましたか?
ハグカムでは従前からベンチャーキャピタルや銀行から資金調達していましたが、そろそろ次の調達も検討するタイミングに入っていました。
そんなときに既存株主から「最近、こういう資金調達の方法があるよ」と紹介してもらったのがYoii Fuelです。といっても、Yoii Fuelの担当者と最初に面談した際には、銀行融資で調達したので結果的に利用には至りませんでした。
時を経てハグカムは今、「もう少しで黒字化できるし、その算段も立っている」という状況に立っています。とはいえ、それまでには広告費や開発費などの運転資金にちょっと不安があるのもまた事実でした。
それでどうしようかと思っていたときに、RBFのことを思い出したんです。今のハグカムにこそ最適な仕組みだと。それで改めて、Yoiiに連絡をとりました。
── ありがとうございます。Yoii Fuel以外のRBFは検討しましたか?
他2社と比較して、Yoii Fuelを選びました。細かい点は違うと思いますが、RBFは基本的には会社の財務状況や過去の実績から金額や手数料率といった条件を算出しますよね。その中で、金額や支払期間といった条件面で最もこちらの希望に沿っていたのがYoii Fuelでした。
── Yoii Fuelを使った感想を教えてください。
他の経営メンバーも忙しかったので審査書類の準備は私がまとめて対応したのですが、手続きがすごく楽でした。ハグカムでは会計システムにマネーフォワードを使っているのですが「マネーフォワードからXXとXXという資料をこうやって取得して、こうやって提出してください」といった指示にしたがっていたら、すぐに終わってしまったんです。
しかも、事前に「審査結果は1週間程度でお知らせします」と聞いていて、それですら「早いな」と感じていたのですが、実際にはそれよりさらに早く審査がおりたんです。他社では2週間かかると聞いていたので驚きました。
── ありがとうございます。スタートアップにとって時間は非常に大切なので、なるべく時間を短縮できるように頑張っています。
ありがたいですね。他にも、担当の方から節目節目に細かく連絡をいただけたのは非常に助かりました。最初オンラインでお話して「検討します」と伝えたら、1週間くらいして「ご検討状況はいかがでしょうか」とメールでリマインドいただけたり、資料を提出した直後に電話をいただいたり。
スタートアップにとって資金調達は最重要事項の一つで、もし書類に不備があってスケジューリングがズレたら大変なことになってしまいます。なので資料一つとっても、ちゃんと提出できているか不安もあったんです。
その点、Yoii Fuelの担当の方は資料を提出した直後にすぐに電話をくれて「資料は問題ありません」と報告してくれました。そうやって親身に電話をくれたのが、印象に残っています。
── スタートアップでは電話を嫌がる方も多いですが、迷惑ではなかったでしょうか。
まったく。無闇に電話されるのは困りますが、今は資金調達という、ミス1つで資金繰りに影響を与えるかもしれない大事な局面です。
そんなときにちゃんと必要なときにだけ電話をくれて、安心させてくれたのは、むしろ非常に嬉しかったです。経営者にとって余計な心配をしなくていいのはありがたい話ですからね。
「資料は大丈夫です。あとは待つだけです」と言っていただいたので、「じゃあ他の業務に集中しよう」という心持ちになれたのはよかったです。
この一連の体験が本当に良かったので、落ち着いたタイミングで経営メンバーに「こういうときのこういう対応は好印象を残すんだよ」なんて話をしたくらいです(笑)。
── ありがとうございます。こちらとしても励みになります。
── 機会があれば、またYoii Fuelは使っていただけそうでしょうか。
使いたいと思っています。というのも、もちろん(銀行融資に比べれば)手数料はそれなりにかかりますが、その分、時間、交渉の手間、資料の用意といった調達コストが大きく削減できるからです。それがYoii Fuelの魅力ではないでしょうか。
特に交渉から入金までの時間については、銀行融資だったら約2ヵ月、VCからの調達だったら4〜6ヵ月ほどは見ておくことが多いかと思います。しかもそれでも成功するかどうかは不確実。
ですがYoii Fuelは資料を出して1週間で返答が来て、契約後すぐに着金しています。時間をかけなくていいのはすごく楽だなと改めて感じました。
ちなみに、知人のスタートアップも資金調達ニーズがあって、RBFとの相性もよさそうだったので、「紹介できるよ」と言っておきましたよ(笑)。
── ありがとうございます、嬉しいです……!
── 最後にハグカム社の今後の展開を教えてください。
先日、自分たちはこれから何をやっていきたいのか、教育の未来はどうなっていくのか、そのために自分たちは今何ができていて、次は何にチャレンジしていくのかといったことをメンバーと一緒に考える機会を設けました。
きっと資金調達前だったらソワソワして、もしかしたらそれどころじゃなかったかもしれません。ですがYoii Fuelを通して資金調達もできたことで、今は未来の話を落ち着いて考えられるようになりました。
資金の悩みが解決されることで、組織や採用、プロダクトといったことに向き合えるようになったんです。そう考えると、悩む時間を減らし、スタートアップとしての未来をどう築くのかという思考に切り替えられたのが、Yoii Fuelを使った最大の効能かもしれません。
ハグカムは創業時から、英会話だけではなく、色々な学びのためのオンラインスクールプラットフォームになりたいと思って活動してきました。今後は英会話で培ったノウハウやアセットを、様々な分野に転用したいと考えています。子どもが好きなことを見つけて、好きなことに夢中になる。両方ができているサービスはなかなかないと思っているので、そういったものが実現できる、オンライン上でのプラットフォームを築いていきたいと考えています。
── 道村さん、本日はありがとうございました。Yoiiもハグカムの成長に協力させてください。
よろしくお願いします。ありがとうございました。
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