RBFがバリュエーションを引き上げる2つのケース。VC目線で語る、Yoii Fuelの活用術|ユナイテッド × Yoii

    27 March 2024

    RBFがバリュエーションを引き上げる2つのケース。VC目線で語る、Yoii Fuelの活用術|ユナイテッド × Yoii

    連携しているベンチャーキャピタル(以下「VC」)から出資を受けているスタートアップのYoii Fuel利用条件をお得にする「VCパートナープログラム」。2024年3月現在は50社超と連携していますが、その中でもユナイテッド株式会社(以下「ユナイテッド」)からは、数多くのスタートアップを紹介していただいています。インターネット黎明期から投資事業に進出し、業界で存在感を放つVCであるユナイテッドの方々は、なぜYoii Fuelを投資先に薦めてくれるのでしょうか。

    同社の井上さんと八重樫さんを訪問し、近年のスタートアップの資金調達を取り巻く環境の変化や、その中でのレベニュー・ベースド・ファイナンス(以下「RBF」)を含めたデットファイナンス(以下「デット」)の位置づけ、Yoii Fuelのメリットや、RBFを使ってバリュエーションを引き上げられる2つのパターンについて、伺いました。

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    (左から)ユナイテッドの八重樫さんと井上さん

    インターネット黎明期からスタートアップに投資。投資先は100社に

    田口(Yoii):

    最初に、ユナイテッドのVCとしての特徴や投資方針を教えてください。

    井上(ユナイテッド):

    ユナイテッドは、東証グロース市場に上場している企業で、「意志の力を最大化し、社会の善進を加速する。」というパーパスを掲げ、投資事業、教育事業、人材マッチング事業の3つのコア事業を展開しています。

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    井上 怜 | INOUE Ryo

    ユナイテッド株式会社 投資事業本部 本部長

    2007年にエルゴ・ブレインズ(現ユナイテッド)に入社後、広告営業、メディア運営、Web/APPプロモーションに従事。その後、コーポレートカルチャー本部副本部長として、採用、育成、広報、人事制度など組織創りを担当**。**

    2018年から投資事業に従事、数十社の投資実行及び投資先支援の他、業務提携投資やLP出資も複数実行。2022年より投資事業本部長就任。

    2007年より私立佼成学園高等学校アメリカンフットボール部コーチを務め、現在はヘッドコーチとしてチーム運営に関わり、5度の日本一に貢献。

    井上(ユナイテッド):

    投資事業はインターネットビジネス黎明期の25年程前より展開しており、これまで数々のスタートアップ企業に投資をしてきました。過去のExitを除き、現在のポートフォリオは約100社で、そのうち6社がIPOをしています。

    新規投資は年間20-30件のペースで実行。投資対象は主に国内のシード・アーリー期のスタートアップです。分野としてはエンタメからフィンテック、SaaSなど、幅広い分野に分散して投資しています。特に「社会課題の解決」と「利益の創出」の両立を目指すスタートアップへは「善進投資」と呼んでリード投資をしています。

    八重樫(ユナイテッド):

    ユナイテッドのVCとしての特徴は大きく3つあります。1つはB/S(貸借対照表)から自己資金で、つまりファンドや子会社を通さずに投資をしているため、チケットサイズや投資期間をあまり気にせずに柔軟性やスピード感をもって投資できること。2つ目に、UVS(UNITED Venture Success)というハンズオンの支援部隊が、我々の事業会社としての経験を活かし、投資先の事業戦略の立案から実行までを一気通貫で支援していること。3つ目に、経営陣やキャピタリストはもちろん、約35のLP出資も含めた幅広いネットワークがあることです。

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    八重樫 郁哉 | YAEGASHI Fumiya

    ユナイテッド株式会社 投資事業本部 キャピタリスト

    新卒でスタートアップの1号社員として入社し、ビジネスサイド全般の立ち上げを推進した後、2020年より独立系VCにて、大手企業や自治体向けのイノベーション関連のコンサルティングに従事。

    2022年5月にユナイテッドに入社後は、HR Tech、バーティカルSaaS、コマース、エンタメ等幅広い領域で投資を実行。

    VCからの調達に、デットを上手く活用する方法

    田口(Yoii):

    それでは本題に入らせてください。まずは近年のスタートアップの資金調達環境の変化をどう捉えていますか?

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    田口 慧 | TAGUCHI Kei

    株式会社Yoii  事業開発

    新卒でみずほ銀行に入行、中小企業向けの融資業務に従事。

    2016年よりデロイトトーマツコンサルティングの戦略部門(モニターデロイト)にて大企業における成長戦略・事業戦略の策定やオープンイノベーションの創出支援などのコンサルティング業務に従事。

    2023年2月よりYoiiに参画し、事業開発をリード。

    井上(ユナイテッド):

    ここ数年、全体的に資金調達をしやすい環境にはなってきているものの、比較的すぐに資金調達できる会社と、苦しむ会社に二極化している印象があります。苦しむ会社の特徴としては、単に事業進捗が芳しくないというだけでなく、過去に高すぎるバリュエーションで調達したために次のラウンドの条件が合わない、といった事例を目にします。またVC側のファンドの大型化に伴い、TAMが大きくないとVC側が投資しにくいといった事情もあるでしょう。

    こういった事情が重なり、VCからのエクイティ性の資金だけでなく、デットなども上手く使ってどのように資金調達をするのかは、現代のスタートアップの重要な経営アジェンダになってきていると感じています。

    田口(Yoii):

    資金調達に苦しむ会社もいるという指摘がありましたが、弊社に相談に来てくださるお客さまの中にも想定より資金調達に時間が掛かりそうなため「もう少しランウェイ(編注:キャッシュがなくなるまでの残存期間)を伸ばしたい」「ブリッジ的にRBFを利用したい」とお話される方も少なくありません。資金調達に費やす時間が長期化するスタートアップの特徴はありますか?

    井上(ユナイテッド):

    確かに資金調達にかける時間は長期化していますね。我々の投資先にも「資金調達する際は少なくとも半年はかかると思っておいた方がいい」とアドバイスをしています。傾向としては、例えばリード投資家が決まっていないとどうしても長引いてしまいますよね。

    八重樫(ユナイテッド):

    スタートアップ側のコミュニケーションの仕方という意味でも、近年は資金調達の難易度が上がり、投資家側の状況把握とそれに応じた機動的な交渉が求められるようになっていると感じます。例えば「リードが決まっていない」と言った場合、候補が全くいないのか、候補はいるけど条件がまとまっていないのかでは、その後の動きが変わってきますよね。

    後者の場合には、スタートアップ側が投資家側の状況を理解し「今リード投資家についてはこういう状況で、こういう条件ならいかがでしょう」と投資家に逆提案できるようなリテラシーをもっていると、リードが決まっていなくてもフォロー投資家が投資を決めてくれるかもしれませんし、実際に最近はそういうケースをよく目にします。

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    田口(Yoii):

    お2人が語るように、スタートアップ側の交渉材料としてRBFを含めたデットを上手く使ってほしいと、我々としては考えています。とはいえ、デットの使い方がわからない、銀行とのコミュニケーションに苦戦しているといった声を、特にシード期のスタートアップからよく耳にするんです。スタートアップのデットの使い方に関して、VC目線ではどう感じますか?

    井上(ユナイテッド):

    一概に「使った方がいい」「使わない方がいい」とは言えませんが、低いバリュエーションで多額のエクイティ調達をしてしまうと資本政策が厳しくなるので希薄化の観点があります。また、次の調達に向けた準備期間として、今の業績にレバレッジを効かせるためにデットを使ったほうがいいようなケースはありえますよね。

    例えば、今資金調達しようとしても希望するバリュエーションがつかないけれど、PMFや売上拡大の予兆はあるというケース。この場合は、ひとまずデットで資金調達し、それを広告や採用、仕入費用に充てて一定期間で事業を拡大させ、バリュエーションがつく段階になったらVCから資金調達する、というやり方をとってもいいでしょう。

    いずれにせよ、デットを使った方がいいにもかかわらず、そもそも選択肢から外れてしまっていてはもったいないのは間違いありません。実際、投資先と今後の調達や資金繰りの話になった際に、無意識にデットを選択肢から除外しているケースは少なくないように感じます。

    田口(Yoii):

    確かに、Yoiiに相談に来てくださるお客さまにも「残りのランウェイが3カ月しかありません」というような、かなりギリギリの段階でRBFを検討する会社は少なくありません。その理由として、そもそも資金調達の手段としてRBFを含めたデットが選択肢に入っていなかった、あるいは優先順位が低かったという点が挙げられます。とはいえデットの性質上キャッシュに余裕があればあるほど、金額や手数料率、返済期間などの面でいい条件が出せるので、我々の立場からすると、なるべく早く相談していただきたいなとは感じています。

    RBFが有益な2つのケース

    田口(Yoii):

    投資先と資金調達に関するコミュニケーションはどのようにとっていますか?

    井上(ユナイテッド):

    そもそもユナイテッドでは「どういった場合にどんな資金調達方法があるか」という情報をまとめてチーム内で共有しています。担当者は必ず投資先の財務情報をキャッチアップしているので、当該情報を活用しながら「今会社はこういう状況なので、次はこういう方法で資金調達したらいいのではないか」といったことを投資先と相談するようにしています。

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    田口(Yoii):

    そうなんですね。その中で、RBFはどのような場合に使うものと位置づけられているのでしょうか。

    八重樫(ユナイテッド)

    大きく2つです。1つは井上が先述したように、今のトラクションだとファイナンスが難しいものの、売上やPMFなどの予兆がある場合。つまり、もう少し時間があればトラクションやエコノミクスが成立する際にブリッジ・ファイナンスとして利用するのは効果的だと考えています。ユナイテッドの投資先でも、事業成長の兆しは見えているものの、トラクションとして顕在化するまでには時間を要するというケースは珍しくありません。その際にRBFを利用して事業を一旦安定させ、次のラウンドに繋げたり、融資に繋げているケースがあります。

    2つ目は、資金調達条件を満たすため。資金調達においては例えば、「全部で数千万円を資金調達できるなら、我々も追加で出資する」という条件で投資をする会社があるんです。例えば「他社から8000万円調達できるなら、A社は2000万円を出資する」といったケースですね。この場合、まずファーストクローズで7000万円を調達します。そうするとランウェイが確保できてRBFが使えるようになるので、RBFで1000万円を調達する。この時点で合計8000万円を調達しているので、A社からも2000万円の調達ができる、といった具合ですね。このように、RBFを使ってエクイティ調達額を引き上げるといったケースは最近よくみかけます。

    田口(Yoii):

    2点目の「資金調達条件」については、確かに我々も聞くケースが増えています。どのような条件かは状況ごとに異なりますが、Yoiiとしては柔軟に対応したいと考えていますので、その際にはご相談いただけるとありがたいですね。

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    Yoii Fuelの「早さ」は起業家の安心材料に

    田口(Yoii):

    1点目の「RBFを使ってトラクションを伸ばし、その間にバリュエーションを上げる」という場合について深堀りさせてください。

    RBFを使えば当然手数料が発生し、通常の銀行融資よりは高くなります。とはいえYoiiとしては、結果的に高いバリュエーションがつけばより大きい金額が調達できるため、その手数料分のコストはペイできると考えています。この説明をすぐに理解していただける方もいれば、やはりRBFの手数料率が高いなと感じられる方もいます。どう思われますか?

    八重樫(ユナイテッド):

    もちろん利率の低い銀行融資が使えるならそれに越したことはないでしょう。ただ今の田口さんの説明には一定の合理性があると思います。また特にYoii Fuelの場合は、面談から1~2週間といった短い時間で着金してくれますよね。これはスタートアップにとっては大きなメリットになります。

    井上(ユナイテッド):

    ユナイテッドとしては、経営者に事業に集中してもらう時間をいかに確保するかは非常に大事だと考えています。資金調達にマインドシェアを奪われると事業に集中できなくなるので、調達が早く決まるかというのは大事な観点なんです。起業家からして、融資にしろエクイティにしろ、審査結果を待っている時間はかなりのストレスになるので、早く着金するという事実は起業家にとって大きなメリットになりますよね。

    八重樫(ユナイテッド):

    また近年、なるべく早く上場するというよりは、なるべく会社を大きくしてから上場する方向に、起業家の考えがシフトしています。となると未上場時に必要な資金は増えるので、今後はデットを活用する場面がより増えてくるでしょう。

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    八重樫(ユナイテッド):

    またエクイティだけで調達すると、最終的に経営者の持分比率は低下してしまうので、希薄化を抑えながらも資金を調達していくという意味でもデットは上手く使っていかなければならないと感じています。

    どれかを選ぶのではない。RBFを資金調達の選択肢の一つに

    井上(ユナイテッド):

    ちなみに、Yoii Fuelは一回審査が通らなくても、次の機会にはまたゼロから審査をしてくれる点もいいですよね。

    田口(Yoii):

    ありがとうございます。スタートアップの場合は特に、1カ月だけでも事業の状態がガラッと変わりうるので、その都度ちゃんと審査するようにしているんです。

    ところで、先ほど「事業成長の兆しは見えているものの、トラクションとして顕在化するまでには時間を要するというケースは珍しくない」というお話がありましたが、Yoiiとしては、この「(事業の)狭間となってしまうような期間」にRBFを上手く使ってもらい、その後に銀行から融資を受けたり、VCからエクイティの調達をしたりして、成長に繋げていってほしいと考えています。

    Yoiiは別に銀行融資やエクイティ調達を代替・ディスラプトしたいとは考えていなくて、単に起業家の選択肢を増やしたいと思っているんです。

    井上(ユナイテッド):

    確かに、銀行による伝統的な融資だと、どうしても債務超過や赤字の会社への融資は難易度が上がりますよね。ですがことシード・アーリー期のスタートアップではこういった状態の会社は珍しくなく、結果として最初から融資という選択肢を外してしまいます。でも一旦資金を得ると、その後急速に成長するわけですよね。そういった場合にRBFは上手く活用してほしいです。

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    田口(Yoii):

    ありがとうございます。我々も頑張っていきます。

    最後に、今後のユナイテッドのVCとしての展望を教えてください。

    八重樫(ユナイテッド):

    ユナイテッドは現在、会社として教育と人材事業にも力を入れていて、人材、教育、投資を有機的に繋いで独自の価値を出していこうとしています。例えばシード・アーリー期のスタートアップの採用では、採用要件が高い、提示給料が高くない、紹介料が高いといった事情から、既存の人材紹介会社とは構造的に相性が良くありません。そこでユナイテッドでは、人材マッチング事業部の配下にある子会社カソークと連携することで、シード・アーリー期の人材採用の課題を解決しようとしています。こういった事例をどんどん増やしていきたいですね。

    井上(ユナイテッド):

    善進投資(ユナイテッドのリード投資)やフォローでの分散投資も含め、既存投資先が100社程の規模になり、コミュニティ化してきました。今少しずつ始めているのですが、今後はこのコミュニティ機能を強化したいと考えています。ユナイテッドが、投資先同士が上手く事業連携するためのハブになったり、事業成長のための新しい刺激を提供する基盤になっていきたいです。

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    田口(Yoii):

    Yoiiにできることがあれば、ぜひ協力させてください。井上さん、八重樫さん、本日はありがとうございました。

    井上・八重樫(ユナイテッド):

    ありがとうございました。

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