スタートアップ経営者のためのデットファイナンスの活用ガイド 〜銀行借入、ベンチャーデット、RBFの実践的比較〜

    2023年12月15日

    スタートアップ経営者のためのデットファイナンスの活用ガイド 〜銀行借入、ベンチャーデット、RBFの実践的比較〜

    先日弊社が公開しました 「2023年 ベンチャー・スタートアップ向けデットファイナンスマップ」にて、皆様にはデットファイナンスによる資金調達にはどのような手段があるのか、またそれぞれの概要についても掴んでいただけたかと思います。

    ただし、スタートアップがどのフェーズや財務状況において、どのタイミングでデットファイナンスを活用するかという調達戦略を具体化すること、また、各資金調達手段を検討する際の実務的なメリットとデメリットを理解している方はまだ多くはいないでしょう。

    当記事では特に、RBF、銀行借入、ベンチャーデットにスポットを当てて解説していきたいと思います。また、当記事においてはベンチャーデットは新株予約権付きなどのエクイティの性格を有するものとして記載します。

    デットファイナンスの基本的な性質と求められること

    まず、そもそものエクイティファイナンスとデットファイナンスの性質に基づいて根本的な違いを整理したいと思います。

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    こちらの表にある通り、エクイティファイナンスは返済不要で長期的に大きなリターンを求められます。そのため、先行きが見えない中で先行投資的な採用・開発・人件費などに使うことに適した調達手段です。

    それに対してデットファイナンスは返済必須で事業収益による返済が求められます。また、基本的には先行きが一定見えている事業にレバレッジを効かせる投資(採用費・人件費・設備投資・販促費)や支払いと売上入金のズレである運転資金に当てられるものです。

    これが基本的な原則です。デットファイナンスをこの原則に反してエクイティファイナンスのためのつなぎ資金として使用する際には、そのリスクを十分理解し、慎重に活用することが重要です。

    資金調達手段ごとの特徴

    次にエクイティファイナンスと比較してRBF、ベンチャーデット、銀行借入の一般的なメリット・デメリットを見ていきます。

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    まず調達コストについて、エクイティファイナンスではキャッシュでの支払いはないもののコストは大きく、ベンチャーデットでは調達コストは金利とストックオプション等の合計となり中程度、RBF(レベニュー・ベースド・ファイナンシング)も中程度、銀行借入では数%と小さくなります。

    調達コストの大きさは基本的にはエクイティファイナンス>ベンチャーデット>RBF>銀行借入という順番になります。

    エクイティファイナンスと比較すると、ポイントは以下のとおりです。

    資金調達手段ごとの利用可能フェーズ

    次に銀行借入、ベンチャーデット、RBFをもう少し分類してスタートアップのフェーズごとにどのような活用ができるか見ていきます。

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    基本的には日本政策金融公庫等の創業融資に始まり、RBF、保証協会の保証付き融資がシードからアーリーフェーズで活用可能で、ミドルフェーズ以降あたりからベンチャーデットや銀行のプロパー融資が活用できるようになってきます。

    ここでポイントなのは、創業融資は初回は比較的容易に調達可能であるのに対して、RBFを除くと、シードからアーリーフェーズあたりまでの、継続的に赤字であったり、黒字化の確度がまだ見えない状態のスタートアップには、実はほとんどの銀行借入・ベンチャーデットの活用が難しいということです。

    また、エクイティファイナンスにおいても、昨今シリーズA以降(アーリーフェーズ以降)の調達の難易度が急激に高まっている傾向にあることから、シードからアーリー、ミドルフェーズという一番資金括りに困りやすい時期に活用できないことも増えてきています。

    頼みの綱の創業融資や保証協会付き融資は返済の実績を重視するため、一度借り入れると基本的に半年から1年間は返済した実績がないと、2回目の利用は申込すらできないこともあります。

    ちなみに昨今スタートアップ企業による多額の銀行借入がニュースになることも出てきましたが、そのほとんどが他のスタートアップ企業では再現が難しい特殊なケースがほとんどなので、見なかったことにしましょう。

    デットファイナンスのプレイヤーごとの利用可能フェーズと特徴

    次に、銀行借入を大まかに分類して特徴を比較していきたいと思います。

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    一般的に利用可能な時期でまとめ直すと、以下のような順番で活用可能になっていくことが多いです。

    日本政策金融公庫>RBF>地域金融機関(地銀・信用金庫・信用組合等)>商工中金>ベンチャーデット・メガバンク

    資金使途

    銀行借入は契約時に申告した用途に使うことが求められ資金使途が縛られます。公庫の創業融資、RBF、ベンチャーデットは比較的自由度が高い傾向にあります。

    調達工数やスピード

    銀行借入やベンチャーデットでは事業計画を提出して、そこに記載されている売上計画の蓋然性やコストの算定ロジックの説明、ネガティブケースでの現預金残高の推移や返済可能性など詳細な説明が必要となります。そのため交渉期間は長くなる傾向にあり、スピード感を持った調達は難しくなります。

    借入期間・調達期間

    実は3-7年等の超長期での借入が可能な日本政策金融公庫や商工中金は非常に特殊であり、通常ベンチャーデットや民間銀行の借入では長期であっても1年から3年の期間になります。また、初回借入や赤字のうちの銀行借入は基本的に1年以内です。RBFも1年以内の短期であることが多いです。

    保証・担保

    日本政策金融公庫の創業融資では無担保・無保証が原則ですが、その他の公庫の借入、銀行借入では昨今でも保証や担保が必要になるケースは少なくありません。それに対してベンチャーデットやRBFは無担保・無保証であることが多いです。

    押さえておくべきTIPS

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    意外とスタートアップの経営者の方々でも意識していないことが多いのは、お金はお金が好きだということです。ビジネスが上手く伸びるほどに成長のための資金が必要になることは多く、成長しているが手元のキャッシュが少なくなるというのはよくあり、現預金残高が減少すると多い時と比較してどうしても返済できるかどうかの不確実性が高まります。

    そのため、現預金残高が多いときにさらにデットファイナンスをすることでより有利な条件で交渉できる可能性が高まります。デットファイナンスで調達すべき時は、お金に困った時ではなく、現預金が多いときです。

    重要なのでもう一度書きます。

    デットファイナンスで調達すべき時は、お金に困った時ではなく、現預金が多いときです。

    また、どのデットファイナンスの手段でも経営者の人となり・誠実性が見られています。究極的には経営者への信用が重要です。お互いにではありますが、誠実なやり取りをしていきましょう。

    そして意外に感じるかもしれませんが、想像の数倍前期の決算が重要視されます。よくあるのは前期の決算では赤字であり、そこまでの成長はないものの、足元6ヶ月で急激に成長しているというときには、実は銀行借入は非常に困難です。

    銀行についてはおそらくスタートアップ経営者の方々の想像以上に営業的な要素が必要になります。どの銀行のどの支店の誰と話し始めるか、うまく仲間感を醸成していけるか、事業計画の前にビジネスをしっかりと理解してもらうなど、多くのスタートアップ経営者の方々が時間をかけていないところですが実は非常に重要です。

    スタートアップの銀行借入でよく名前が上がる金融機関

    最後に、スタートアップが銀行借入をする際によく名前が上がる金融機関をご参考までに列挙しておきます。

    ※支店や担当者によっても大きく方針は異なります。

    次回以降で、銀行借入、RBFなどをそれぞれ深掘りしていき、実践的なTIPSをお届けしていきたいと思います。

    よくある質問

    調達コストの大きさは概ね株式調達(株式調達(エクイティ))ファイナンス>ベンチャーデット>RBF>銀行借入の順になります。銀行借入は金利が数%程度と最も低コストですが、その分審査基準が厳しく、赤字・債務超過の状態では利用が難しいケースがほとんどです。ベンチャーデットは金利に加えストックオプション等の株式報酬コストも発生するため中程度のコストとなります。RBFも中程度のコストですが、調達に要する対応工数が極小でスピーディに資金を確保できる点が大きな特徴です。いずれも株式調達(株式調達(エクイティ))ファイナンスと比べれば実質的なコストは低く、成長段階や財務状況に合わせて組み合わせることが重要です。
    シード・アーリーフェーズで赤字が続く状態でも活用できる融資・社債ファイナンスの手段は、実は限られています。創業初期であれば日本政策金融公庫の創業融資が比較的利用しやすいですが、一度利用すると半年から1年間の返済実績がないと2回目の申込すら難しいケースもあります。一定の売上げ実績が積み上がっていれば、RBFは赤字・債務超過という形式的な要件で申し込めないことはなく、売上げ実績次第でアーリーフェーズから活用できます。また保証協会付き融資もアーリーフェーズから選択肢となります。ミドルフェーズ以降まで継続的に赤字であるスタートアップに対応できる銀行借入やベンチャー融資・社債は非常に少ないのが現実です。
    「お金に困ったとき」ではなく、現預金が多いときこそ融資・社債ファイナンスで調達すべきというのがこの記事の核心的なTIPSです。事業が成長するほど成長のための資金需要が高まる一方、手元のキャッシュが減少すると返済の不確実性が高まるとみなされ、借入条件が不利になります。逆に現預金残高が潤沢な状態で融資・社債ファイナンスに臨むと、より有利な条件で交渉できる可能性が高まります。つまり融資・社債ファイナンスは「資金が尽きそうになってから動く」のではなく、財務が健全なうちに戦略的に積み上げておくことが重要です。これはスタートアップ経営者が意外と見落としがちな実践的な原則です。
    銀行借入には財務数値だけでなく、非財務的な要素が想像以上に大きく影響します。まず前期の決算が極めて重視されるため、足元6ヶ月で急成長していても前期が赤字であれば銀行借入は非常に困難です。また、どの銀行のどの支店の誰と話し始めるかという入口の選択、担当者との関係性の構築、事業計画を説明する前にビジネスそのものをしっかり理解してもらう営業的なプロセスが不可欠です。過去の借入とその返済実績、創業年数なども評価対象となります。加えて、どの融資・社債ファイナンスの審査においても経営者の誠実性・人となりが見られており、誠実なやり取りを積み重ねることが長期的な信頼関係の構築につながります。
    成長フェーズに応じた組み合わせが基本的な考え方です。創業直後のシード期は日本政策金融公庫の創業融資を基盤とし、一定の売上実績がついたアーリーフェーズからは対応工数が少なくスピーディなRBFをマーケティング費や採用費などの成長投資に活用するのが有効です。黒字化が見えてきたミドルフェーズ以降は、保証協会付き融資や地域金融機関の融資でより低コストの資金を積み上げ、さらにベンチャーデットで大型の成長資金を確保するという多層的な戦略が取れるようになります。重要なのは「デットは株式調達(株式調達(エクイティ))のつなぎ資金として無計画に使うのではなく、先行きの見えている事業にレバレッジをかける投資として使う」という原則を守ることです。Yoii FuelはこのうちRBFの役割を担う選択肢として、最短2週間・担保不要・無保証でアーリーフェーズから活用できます。

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