27 September 2022
シューズブランド「Allbirds」やアイウェアブランド「Warby Parker」など、米国にはD2C(Direct to Consumer)のビッグプレイヤーが存在します。米調査会社「eMarketer」によると、米国のD2C市場規模は、22年に$155.7B(約22.3兆円、$1=143円換算)、24年には$212.9B(約30.4兆円)になると予想されています。
一方、国内でもメンズスキンケア「バルクオム」や完全栄養食「BASE FOOD」など、D2Cスタートアップが存在感を高めています。「売れるネット広告社」の調査によると、国内D2Cの市場規模は、22年に2.6兆円、25年には3兆円に達すると予測されています。経済産業省の調査によると日本のEC化率は8.8%(21年)であることから、デジタル化の余地が大いにあることがわかります。
そこで今回は、国内D2Cスタートアップの現状を紹介。資金調達トレンドを中心にどのようなプレイヤーが市場を牽引しているのか解説します。
公開情報をもとに、国内にどのくらいD2Cスタートアップがあるのか調べてみました。今回は以下の条件に該当する企業をピックアップしています。
調査の結果、国内にはD2Cスタートアップが138社(弊社調べ、22年9月時点)あることがわかりました。カテゴリ別に企業数を見ると、ファッション(44社)や食品・飲料(41社)が圧倒的に多く、盛り上がりを見せています。
ファッション分野で代表的なのは「FABRIC TOKYO」。オーダーメイドスーツなどを提供するスタートアップです。12年に創業された同社は22年1月、ニッセイ・キャピタルやグロービス・キャピタル・パートナーズなどから10.3億円を調達(デット含む)。調達資金は商品企画・開発およびテクノロジーへの投資へ充てるとのことです。
食品・飲料領域では「ナッシュ」が存在感を高めています。16年に創業された同社は、自宅で簡単に栄養管理できるデリバリーフードサービスを提供。昨今は健康志向が高まっていることもあり、同社の成長を後押ししています。22年4月にはマイナビおよびマルハニチロとの資本業務提携を発表。提携により製造・物流コストの低減、品質向上を目指すといいます。
D2Cスタートアップの資金調達額は16年あたりから増加傾向にあり、19年からは急増していることがわかります。21年は過去最高の124.2億円となり、累計調達金額(11-21年)は454.5億円となりました。9月時点ですでに88.2億円となっていることから、22年は昨年と同等水準もしくは過去最高となるかもしれません。
22年2月、完全栄養食「BASE FOOD」を提供するベースフードがTHE FUNDから10億円を調達。累計調達金額は約19.8億円となり、評価額は約503.3億円となりました。評価額としてはD2Cスタートアップの中でトップクラスとなります。
「BASE FOOD」は1食で1日に必要な栄養素の3分の1が摂れる完全栄養食。17年に誕生した同ブランドは、21年11月末に累計販売数が1,500万食を突破。22年2月には月間定期購入者数が10万人を突破しました。同じD2C企業でも、ベースフードのようなLTVを重視する「サブスク型」とそうでない「売り切り型」で、資金調達のしやすさやマルチプルの付き方が変わってくるでしょう。
22年5月にはパーソナライズヘアケア「MEDULLA」などを手掛けるSpartyが、仏ロレアルのCVC「BOLD」から資金調達を実施。本ラウンドにより累計調達額は約44.9億円、評価額は約237.6億円となりました。同社は「MEDULLA」のほか、パーソナルスキンケア「HOTARU PERSONALIZED」、パーソナライズボディメイク「Waitless」を展開。22年2月時点で、3ブランドの累計会員数は50万人以上となっています。
ステージ(INITIALが定義)別でみるとシードステージが最も多く(24.6%)、今後も成長が見込まれる市場だと言えます。また、シリーズA/Bを加えると全体の半数以上となり、成熟企業はまだ多くないのが現状です。
スキンケアブランド「sirobari」を提供するリバースラボは22年1月、シードラウンドにて約2億円を調達。同社では初のエクイティファイナンスとなり、評価額は約11.1億円となりました。同ブランドは発売から1年半で累計販売数は30万枚を超えるなど、急速に支持を集めています。
「寝かせ玄米」を提供する結わえるは22年8月、シリーズAラウンドの資金調達を発表。環境エネルギー投資やグロースポイント・エクイティなどから約2.5億円を調達しました。これにより累計調達金額は約10.9億円、評価額は約17.5億円となっています。「寝かせ玄米」は圧力釜で炊いた玄米を数日寝かせて作る食品。今回の調達によりブランド強化や新商品の開発、採用活動の強化などに注力するといいます。
D2Cスタートアップの累計調達金額TOP10(22年9月時点)をみると、「食品・飲料」や「美容」、「ファッション」が占有。これらの分野にリスクマネーが流入していることがわかります。
調達金額が最も大きいSUPER STUDIOは、「ふつうのマヨネーズ」などの食品をはじめ、複数のブランドを抱えます。22年6月には31VENTURESやALL STAR SAAS FUNDなどから約44億円の資金調達を実施。本ラウンドにより累計調達額は約68.7億円、評価額は約235.7億円となりました。もっとも、同社はEC/D2C企業向けSaaS「ecforce」を主軸事業としており、純粋なD2Cスタートアップと比較するのはナンセンスかもしれません。
メンズスキンケアブランド「BULK HOMME」を展開するバルクオムは、これまで約37.1億円を調達。直近ラウンド(21年11月)では、クールジャパン機構やShanghai Shenyi Network Technologyから資金調達し、評価額は約202.5億円となりました。また、21年3月には森岡毅氏率いる刀社との資本業務提携を発表。同社のマーケティングノウハウを取り入れ、メンズスキンケア分野でグローバルシェアNo.1達成に向けた取り組みを強化するといいます。
さいごにバリュエーションを確認してみます。評価額TOP10では、累計調達金額にはなかった「ヘルスケア」分野がランクインしています。
中性重炭酸入浴剤ブランド「BARTH」などを抱えるTWOは22年1月、シリーズAラウンドにてカゴメから5億円を調達。本ラウンドにより累計調達金額は約9.4億円、評価額は約124.1億円となりました。同社は植物由来の食品ブランド「2foods」も抱え、カゴメとの提携により共同商品の開発など、シナジー創出を図るといいます。
菌を活用したヘルスケアブランド「KINS」を展開するKINSは22年2月、シリーズBラウンドにてジャフコやエースタートなどから9.5億円(デット含む)を調達。本ラウンドにより累計調達額は約12.4億円、評価額は約58.3億円となりました。同ブランドは提供開始してから累計約1.5万人の皮膚や頭皮における常在菌データを分析。今回の調達資金を活用し、プロダクトラインの拡大やグローバル展開などに注力するといいます。
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