19 January 2025
D2Cとは
(22年比較)ファッションは低調傾向、食品・飲料とヘルスケアが台頭
アーリーステージの企業だけでなく、シリーズDでも増加が見られる
新たにケミカル、ブランドコマース分野でも資金調達が加速
ヘルスケア分野や食品・飲料分野にも注目
まとめ
最後に
最近よく目にする『D2C(Direct to Consumer)』とは、企業がECなどを通じて、消費者へ直接商品を販売することをいいます。そこで今回は、国内のD2Cスタートアップにおける、2024年のトレンドを解説していきます。
2022年にYoiiが書いた記事「D2Cスタートアップの資金調達トレンド」からのアップデート版となっております。こちらもぜひチェックしてみてください!
注1: 本記事における企業のステージ、評価額は全て、Initialから引用しております。
注2: 本記事における金額は全て、少数点第二位で四捨五入しております。
D2Cは、近年、市場で存在感を高めています。
米調査会社「eMarketer」は、米国の25年D2C市場規模が、約33.4兆円(前年比2.1兆円増)を超えると予想しています。一方、国内でもD2Cスタートアップが台頭中。国内D2Cの市場規模は、22年に2.2兆円、25年には3兆円を超えると予測されています(「売れるネット広告社」)。経済産業省が公開している日本のEC化率は年々上昇しており、デジタル化の進展に伴い、D2C市場のさらなる拡大が見込まれています。
公開情報をもとに、国内のD2Cスタートアップについて調査を行いました。今回は以下の条件に該当する企業をピックアップしています。
調査の結果、国内にはD2Cスタートアップが176社(弊社調べ、25年1月時点)あることがわかりました。カテゴリ別で企業数を2022年と比較すると、ファッション分野は減少(31社)、食品・飲料(50社)やヘルスケア(32社)は増加しています。
ファッション分野で代表的なのは「JEPLAN(ジェプラン)」。衣料品やペットボトルのリサイクル事業を展開しているスタートアップです。07年に創業した同社は、22年9月、第一生命保険株式会社、東京海上日動火災保険株式会社、楽天キャピタルなどから約24.4億円を調達しています(融資含む)。
食品・飲料領域では「BASE FOOD」や「ナッシュ」だけでなく、「坂の途中」も注目を浴びています。09年に創業された同社は、環境負荷が小さい方法で育てられた農産物・加工品を購入できる通販サイトを運営。昨今のサステナブルに対する関心の高まりも同社の成長を後押ししています。同社は2021年5月に、生産者との連携強化、海外事業およびオーガニック農産物の事業拡大を目的に、8.3億円の資金調達を実施しています。(2023年8月にも資金を調達, 詳細未公開)
ヘルスケアジャンルで特に存在を高めているのは「Sparty」。パーソナライズを基軸としたD2Cブランド(ヘア・スキンケア、ボディメイクサービス)を展開しています。17年に創業された同社は21年8月に三菱UFJ銀行などからの融資も含め、総額41億円の資金調達を行っています。また、22年5月には、仏・ロレアルグループから第三者割当増資を実施。コロナ後、ヘルスケアに対する関心が広がる今、これからも期待される会社です。
D2Cスタートアップの資金調達額は、年々増加しています。次に、その推移をステージ別で解説していきます。
ステージ(INITIALが定義)別でみると2022年から、シードステージ(18社増)、シリーズA(6社増)などのアーリーステージでD2Cスタートアップ企業数が大きく増えており、これからの成長に期待できます。
全体の割合は、2022年から変わらず、シードステージ(29%)が最も多いです。一方で、シリーズCやシリーズDにおいてもわずかに企業数は増えています。この成長は、D2C業界を牽引する有力スタートアップの台頭を意味し、今後も市場の拡大が期待できるのではないでしょうか。レイターステージに位置する企業の今後の成長にも注目していきたいところです。
リサイクル事業を展開するJEPLANは、追加株主を迎え、累計調達金額が約127.9億円に達しました。評価額は約383億円となり、D2Cスタートアップの中ではトップクラスの水準を誇ります。同社は廃棄物をリサイクルし、新たな製品を創出する独自の技術を有し、循環型ビジネスのリーダー企業として業界を牽引しています。2007年の設立以来、ペットボトルや衣料品などから新たなリサイクル素材を生成する技術で注目を集めており、その技術力に対する評価は年々高まっています。
2022年時点で、累計リサイクル量は数万トンを超え、主要ブランドや企業との提携を着実に拡大。サステナビリティへの社会的関心が高まる中で、JEPLANは「循環型経済」の推進役として地位を確立しています。
22年5月にはパーソナライズヘアケア「MEDULLA」などを手掛けるSpartyが、仏ロレアルのCVC「BOLD」から資金調達を実施。本ラウンドにより累計調達額は約44.9億円、評価額は約237.6億円となりました。同社は「MEDULLA」のほか、パーソナルスキンケア「HOTARU PERSONALIZED」、パーソナライズボディメイク「Waitless」を展開。22年2月時点で、3ブランドの累計会員数は50万人以上となっています。
AIプラットフォームAnyAIなどを提供するAnyMindは、16年シンガポールにて創業。同社は22年7月に、株式や融資により、合計約50億円を調達しました。累計調達額は約119億円、評価額は約556.4億円に達しています。同企業は13ヵ国・地域に17拠点を展開し、2021年12月期の売上は190億円を超えるなど、急速に支持を集めています。上記の50億の調達資金は、既存事業への成長投資や将来的なM&Aの活用へ充てるとのことです。
D2Cスタートアップの累計調達金額TOP10(25年1月時点)をみると、「食品・飲料」や「ヘルスケア」、「ファッション」が占有。
調達金額が最も大きいJEPLANは、商用プラント・技術ライセンス・アパレル・ボトル事業など、複数の事業を行っております。累計調達額は約128億円、評価額は約383億円に到達。もっとも、同社はB2B企業向けリサイクル技術やプラットフォーム提供を主軸事業としており、純粋なD2Cスタートアップとは定義しがたいかもしれません。
オーダービジネスウェアブランド「FABRIC TOKYO」を提供するFABRIC TOKYOは、これまで約44.8億円を調達。22年1月にはニッセイ・キャピタルなどから10.3億円を資金調達しました。また、23年2月には弊社Yoiiが提供するサービス「Yoii Fuel」にて資金を調達しています。2025年1月時点の評価額は約38.1億円となっています。
最後にバリュエーションを確認します。評価額TOP10では、2022年にはあまり見られなかった「ヘルスケア」分野がランクインしています。
中性重炭酸入浴剤ブランド「BARTH」などを抱えるTWOは22年1月、シリーズAラウンドにてカゴメから5億円を調達。本ラウンドにより累計調達金額は約9.42億円、評価額は約124.1億円となりました。同社は植物由来の食品ブランド「2foods」も抱え、カゴメとの提携により共同商品の開発など、シナジー創出を図るといいます。
菌を活用したヘルスケアブランド「KINS」を展開するKINSは24年7月、シリーズDラウンドにてNIPPON EXPRESSホールディングス株式会社や楽天グループ株式会社などから5億円(デット含む)を調達。本ラウンドにより累計調達額は約35億円、評価額は約71.4億円となりました。同ブランドは提供開始してから累計約1.5万人の皮膚や頭皮における常在菌データを分析。今回の調達資金を活用し、コンシューマーヘルスケア事業や研究ケイパビリティの強化などに注力するといいます。
ここまでは、D2Cスタートアップの資金調達トレンドについてご紹介しました。最後に、D2Cスタートアップの皆様におすすめの新しい資金調達手段として、**RBF(レベニュー・ベースド・ファイナンス)**をご紹介します。
RBFとは、過去の売上データや現在の財務状況から将来の収益を予測し、その一部を利用する調達手法です。RBFの特徴として、①数億円までの大口での調達が可能、②手間と時間をかけずに調達可能、③希薄化一切なし、といったメリットがあります。また、将来の売上に対して審査・評価を行うため、銀行融資による調達が難しい場合でも活用が可能です。
他の調達手段と比較すると以下のような違いがあります。
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Yoiiでは、このRBFの考えを基にしたSaaSやD2Cなどのスタートアップ企業に成長を加速するための独自のアルゴリズムを用いた未来査定型資金調達プラットフォーム「Yoii Fuel」を運営しています。
「Yoii Fuel」を用いると、申請に保証や担保は不要・株式の希薄化を防ぐだけでなく、会計・決済システムと連携すれば、より簡単にかつスピーディー(最短6営業日)に調達可能です。
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