2 November 2023
資金調達を検討しているスタートアップの経営者の方であれば、エクイティファイナンスという言葉を聞いたことがあるかと思います。この記事では、スタートアップにとって有力な資金調達の手段の一つであるエクイティファイナンスについて解説いたします。
この記事のサマリ
そもそも「エクイティ」とは株式を意味しています。「エクイティファイナンス」は、企業が新株などを発行し、株主からの出資を受けることで資金調達を行う手法です。
①返済義務が無い
エクイティファイナンスは銀行融資などと異なり返済義務が無いことが特徴です。
プロダクト開発やマーケティングのために大規模な資金調達を行っても、返済に追われる心配が無く、事業成長に集中できるのはスタートアップにとって大きなメリットでしょう。
②財務の健全性が高まる
返済義務が無い資金を「自己資本」と呼びますが、エクイティファイナンスを行うと自己資本が増えるため、総資本の中で自己資本が占める割合(=自己資本比率)が高まります。
自己資本比率が低いほど、銀行融資など他人資本に強く依存しているため、財務基盤や経営としては不安定になります。
もちろん「自己資本比率が高ければ倒産しない」というものではないが、エクイティファイナンスを行うことで自己資本比率が高まり、財務の健全性も高まるといえるでしょう。
③金融機関からの融資よりもハードルが低い
資金調達の手段として、銀行など金融機関から融資を受ける方法もあります。しかし、いくつかの理由により、スタートアップ(特に初期フェーズ)だと融資を受けるのはハードルが高くなります。
一方、エクイティファイナンスは、その企業の将来性を評価しているため赤字であってもプロダクトやビジネスモデルが魅力的であれば出資に繋がる可能性があります、そのため、融資に比べてハードルが低いといえます。
④株主からの支援を受けられる
株主となる個人投資家やベンチャーキャピタルは、投資先の企業が成長し、株式価値が高まること(キャピタルゲイン)を期待して出資しています。出資だけではなく、企業成長のための経営に関するアドバイスや人材紹介などの支援をしてくれる可能性があります。
個人投資家やベンチャーキャピタルについては以下の記事も合わせてご覧ください。
エンジェル投資家とは 〜概要・出会い方・出資を受けるにあたっての注意点の解説〜
ベンチャーキャピタル(VC)の概要とVCからの資金調達のポイント解説
①株式の価値が相対的に下がる
1株あたりの利益とは、株式の価値を評価するための指標です。「当期純利益÷株式総数」で計算できますが、新株を発行すれば株式総数が増えるため、1株あたりの利益は下がることになります。これを「株式の希薄化」と呼びます。
株式が希薄化すると、株式を持つ経営陣や既存株主の利益が減ることになります。これは金額的な利益が減ることはもちろん、株主からの苦情や不信感にも繋がることがあります。
②株主の影響力が高まる
新株を発行すると、以下の理由から株主の影響力が高まるため、株主が経営に介入する機会が増えます。
例えば、資金調達のために新株発行を検討しているとき、(前述の希薄化リスクがあるため)株主がそれに反対する、といったことが考えられます。
実はエクイティファイナンスにも手法がいくつかあります。ここでは、スタートアップでも使いやすい手法をご紹介いたします。
既存株主(自社を除く)に対し、持ち株比率に応じて新株を発行する手法です。
と、株主の影響力増大リスクを抑えられるのが企業にとってのメリットです。
一方、
といったデメリットがあります。
特定の第三者に対し、株式を発行する手法です。「第三者」とは新規の株主でも構いません。
などがメリットです。エクイティファイナンスとしては頻繁に使われる手法であり、ニュースやプレスリリースなどでも多くの増資事例を確認できます。
一方、既存株主にとっては持株比率が低下し、前述の希薄化や影響力低下を招く恐れがあります。株主からの反発などに備えて、株主への事前説明などの手間がかかるのがデメリットといえます。
社債の一つですが、普通社債と異なり、「発行時に決めた価格で社債を株式に転換できる」という特徴があります。通常、社債はエクイティファイナンスには含まれないのですが、(株式への転換後は返済義務が無くなるため)転換社債型新株予約権付社債はエクイティファイナンスとして扱われます。
などが企業側のメリットです。
一方、
などのデメリットがあります。
株主に対して新株予約権を発行する手法です。
株主に対して新株予約権を発行し、企業が一定金額以上の資金調達を行った際、新株予約権が株式に転換されるという仕組みです。
また、発行時点では出資条件などを細かく決定せず、次の資金調達時に決定されるという特徴を持ち少々複雑な仕組みとなっておりますが、
などのメリットがあり、シード期などのスタートアップが迅速に資金調達を行う手法として人気です。
一方で、
といったデメリットもあります。
デットファイナンスとは、銀行融資や社債発行など、資本を借り入れることで資金調達を行う手法です。
エクイティファイナンスとデットファイナンスは、以下のような違いがあります。
エクイティファイナンス | デットファイナンス | |
---|---|---|
返済期限 | 無い | ある |
自己資本率 | 上がる | 下がる |
株式の価値 | 希薄化する | 変わらない |
株主の影響力 | 高まる | 変わらない |
デットファイナンスについては以下の記事も合わせてご覧ください。
デットファイナンスの概要やスタートアップ向けの調達手法の解説
ここまでエクイティファイナンスについて解説しました。スタートアップにとって有力な資金調達の手法ではあるものの、株式の希薄化などのリスクも持っています。
最近ではそうしたリスクを解消した新しい資金調達の手法として、レベニュー・ベースド・ファイナンシング(RBF)という手法があります。
簡単に説明すると、過去の売上データから将来の売上を予測し、将来の売上の一部を買い取る形で資金提供するという手法です。エクイティファイナンスのように株式の希薄化リスクが無いといったメリットがあります。
RBFについて詳しくは以下の記事をご覧ください。
5分でわかる「レベニュー・ベースド・ファイナンシング(RBF)」デットでもエクイティでもない新たな資金調達手段
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