【図解×Q&A】デットファイナンスとエクイティファイナンスの違いをBSで可視化|5大比較表付き

    30 May 2025

    【図解×Q&A】デットファイナンスとエクイティファイナンスの違いをBSで可視化|5大比較表付き

    企業の成長には、適切なタイミングでの資金調達が不可欠です。しかし、「エクイティファイナンス」と「デットファイナンス」という言葉は聞いたことがあっても、それぞれの違いや、自社にとってどちらが最適なのか、いまいちピンとこない方も多いのではないでしょうか。

    この記事のサマリ

    デットファイナンスは返済義務と金利負担を伴う「負債」型、エクイティファイナンスは返済義務はないが経営権希薄化を伴う「自己資本」型。

    ・企業の成長段階、財務状況、事業内容に応じ、両者のメリット・デメリットを比較し、最適な資金調達戦略を選択することが重要。

    ・デットは返済負担と財務制限リスク、エクイティは経営権希薄化と投資家からのプレッシャーなど、各手法固有の注意点を理解する必要がある。

    こんな方におすすめ!

    ・これから資金調達を検討している経営者・起業家の方

    ・資金調達を担当している財務担当者の方

    ・金融業界への就職・転職を考えている方

    Q1. ズバリ、デットとエクイティの違いは?

    企業が事業を運営・拡大していく上で、資金は血液のようなものです。その資金を外部から調達する方法は、大きく分けて「デットファイナンス」と「エクイティファイナンス」の2つに分類されます。これらは、資金の調達元、返済義務の有無、経営への影響度など、根本的な性質が異なります。

    ズバリ、二つの違いは、「負債」型か、「自己資本」型か、です。

    デットファイナンスは返済義務を伴う「負債」型の資金調達である一方、エクイティファイナンスは返済義務がない代わりに株式の希薄化を伴う「自己資本」型の資金調達です。

    デットファイナンスとは

    その名の通り「Debt(負債)」を増やす形の資金調達です。企業が、将来の返済を約束する代わりに、外部から資金を借り入れる方法を指します。

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    最も身近な例は、銀行からの借入(融資、ローン)です。企業は銀行からお金を借り、契約に基づいて定められた期間内に元本を返済し、利息を支払う義務を負います。

    デットファイナンスで調達した資金は、企業のバランスシート上では「負債」の部に計上されます。(上記表参照)

    エクイティファイナンスとは

    エクイティファイナンスは、「Equity(株式、自己資本)」を増やす形の資金調達です。企業が、株式を発行して外部の投資家に購入してもらうことで、自己資本を増加させます。(下表参照)

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    最も一般的なエクイティファイナンスの手段は、株式の発行です。新たな株式を発行し、VC、エンジェル投資家、個人投資家、あるいは既存株主などから資金を調達します。

    エクイティファイナンスで調達した資金は、企業のバランスシート上では「純資産」として計上されます。これは、企業が返済義務を負わない「自己資本」として扱われます。(上記表参照)

    Q2. 返済義務や希薄化リスクは?

    デットファイナンスとエクイティファイナンスの最大の違いは、返済義務の有無と、それに伴う希薄化リスクの有無です。

    ① デットファイナンス:

    返済義務あり。希薄化リスクはなし。

    デットファイナンスは、金利(企業の費用として計上される)が発生する一方で、経営権が希薄化するリスクはなく、支払う利息は、損金(費用)として計上できるため、法人税の課税所得を減らす効果があります。ただし、財務状況、返済能力などの自社の信用力が重要で、借入の可否や金利条件に大きく影響します。

    ② エクイティファイナンス:

    返済義務なし。しかし希薄化リスクあり。

    エクイティファイナンスは、自己資本を増やす形であるため、デットファイナンスのような「返済」の義務はありません。

    返済義務や金利が発生しないという利点がある一方、新たな株主の存在により、経営権が希薄化するリスクがあります。ですが、デットファイナンスと異なり、必ずしも過去の実績や安定したキャッシュフローがなくても、将来の成長性に基づいて資金を調達できる可能性があるため、特にスタートアップ企業にとって重要な調達手段です。

    つまり、デットファイナンスは「確実な返済負担」と引き換えに経営権の安定を保ち、エクイティファイナンスは「返済負担なし」と引き換えに経営権の希薄化を受け入れる、というトレードオフの関係があるのです。

    御社にはどちらが向いていますか?

    Q3. どっちが自社に向いている?

    エクイティファイナンスとデットファイナンス、どちらが自社に向いているかは、企業の成長段階、財務状況や経営戦略によって異なります。

    まずは表を用いてこれら3つの観点を比較し、どちらが自社に適しているか確認してみましょう!詳しく知りたい部分は、表下の説明文へ。表のみで十分という方は、次のセクションへ! ←Q4始めのリンクを挿入します!

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    デットファイナンスが向いているケース

    <成長段階>

    ・安定したキャッシュフローがある企業: 定期的な利息の支払いと元本の返済が無理なく行える企業。

    <財務状況>

    ・資金使途が明確で短期〜中期的な資金ニーズがある企業: 返済計画を立てやすい。

    <経営戦略>

    ・経営権を維持したい企業: 新たな株主の介入を避け、経営の自由度を保ちたい場合。

    ・信用力が高い企業: 低金利で多額の資金を調達できる可能性が高い。

    ・節税効果を重視する企業: 利息は損金算入できるため、税負担を軽減できる。

    エクイティファイナンスが向いているケース

    <成長段階>

    ・スタートアップやベンチャー企業: まだ実績や信用力が乏しく、銀行からの融資が難しいが、将来の成長性・技術力・アイデアが評価され、資金を調達できる。

    ・急成長を目指す企業: 大規模な設備投資やM&Aなど、多額の資金を一括で調達し、一気に事業を拡大したい場合。返済負担がないため、成長投資に集中できる。

    <財務状況>

    ・財務体質の健全化を目指す企業: 自己資本を増やすことで、負債比率を下げ、財務の安定性を高めることができる。

    <経営戦略>

    ・専門的な知識やネットワークを求める企業: VCなどから資金を調達する場合、資金提供だけでなく、経営ノウハウ、人材紹介、販路拡大などの支援も期待できる。

    ・ハイリスク・ハイリターンが見込める事業: 負債であれば失敗時の負担が大きいが、エクイティならそのリスクを投資家と共有できる。

    Q4. あなたの会社に合っているのはどちら?【5大ポイント比較】

    デットファイナンスとエクイティファイナンスの選択は、企業の将来を決定する重要な経営判断です。ここでは、比較すべき主要な5つのポイントを分かりやすく整理しました。

    比較ポイントデットファイナンス(負債)エクイティファイナンス(自己資本)
    1. 返済義務あり(元本+利息)なし
    2. 金利ありなし
    3. 経営への影響なし高い(新規株主の経営関与、議決権の変動)
    4. 評価ポイント安定した収益・資産、信用力が重要成長性、事業アイデア、将来性が重視される
    5. 財務への影響負債増加、自己資本比率の低下自己資本増加、自己資本比率向上

    これらの重要ポイントを基準として、自社に合うのはどちらの仕組みなのか吟味していきましょう!

    Q5. それぞれの資金調達手段を使うにあたっての注意点は?

    どんな資金調達方法にも、メリットとデメリット、そして潜むリスクが存在します。それらを十分に理解し、慎重に判断することが、企業の持続的な成長には不可欠です。

    デットファイナンスの注意点

    デットファイナンスは安定した資金調達源となりうる一方で、以下のような注意点があります。

    1. 過度な借入は慎重に

    景気変動や事業不振により売上が減少しても、元本と利息の返済は続ける必要があります。過度な借入は倒産リスクを高めてしまうため、気を付けましょう。

    1. 財務制限条項(コベナンツ)

    銀行からの融資や社債発行において、特定の財務比率の維持(例:自己資本比率が〇%を下回らない、債務超過にならない)や、担保提供、経営者の交代に関する制限などが契約に盛り込まれることがあります。これらの条項に違反すると、期限の利益を喪失し、本来はまだ返済期日が来ていない残りの債務についても、一括で直ちに全額返済を求められることがあります。違反行為がないよう注意しましょう。

    ※期限の利益とは、債務者が、契約で定められた期限が到来するまでは、債務を返済しなくても良いという恩恵や権利のこと。

    1. 信用情報の悪化

    返済の遅延や滞納は企業の信用情報に傷をつけ、今後の新たな借入を困難にする可能性があるため、返済期限は遵守しなくてはいけません。

    1. 過剰債務(デット・オーバーハング)

    多額の負債を抱え、新たな成長投資を行う余裕がなくなってしまう状態を指します。過度な債務が膨らむ前に対処するように心掛けましょう。

    エクイティファイナンスの注意点

    エクイティファイナンスは返済義務がない自由度の高い資金ですが、利用時は以下の注意点を理解しておく必要があります。

    1. 経営権の希薄化や喪失

    新株発行により、既存株主、特に創業者の持株比率が低下し、経営に対する議決権が弱まります。非常に重要なポイントです。外部株主の意向に経営が左右されることがないよう、細心の注意を配りましょう。

    1. 投資家からのプレッシャー

    VCなどのプロ投資家は、ハイリターンを求めて投資します。そのため、短期的な業績向上を求めるプレッシャーが強くなることがあり、経営戦略が投資家の意向に沿うものになる可能性があります。投資家の意向を早めに確認した上で行動していくことが必要です。

    1. 情報開示の義務

    株式公開して調達する場合、投資家や市場に対して企業の財務情報や経営状況を詳細に開示する義務が生じ、透明性が求められます。未上場企業でも投資家との契約によっては詳細な報告義務が発生するため、慎重に利用を検討しましょう。

    1. 株式評価の難しさ

    未上場企業の場合、株式の適正な価値を評価することが難しく、資金調達の交渉が長期化したり、期待よりも低い評価額での調達になる可能性があります。早めに専門家に相談し、適正な企業価値評価を行うようにしましょう。

    まとめ

    エクイティファイナンスとデットファイナンスは、企業の成長ステージや目的に応じて使い分けるべき、全く異なる性質の資金調達方法です。

    ・デットファイナンスは返済義務と金利負担が伴う「負債」型。安定したキャッシュフローを持つ企業や、経営権を維持したい企業に適している。しかし、返済負担がキャッシュフローを圧迫し、企業の信用力を左右するリスクがある。

    ・エクイティファイナンスは返済義務がない代わりに経営権の希薄化を伴う「自己資本」型で、創業期のスタートアップや急成長を目指す企業に適している。経営権の希薄化や、投資家からのプレッシャーに注意。

    それぞれのメリット・デメリット、リスクを考慮し、あなたの会社にとって最適な資金調達法を見つけましょう!

    比較してわかる、おすすめの資金調達方法

    エクイティやデットファイナンスには大きな資金を調達できるという大きなメリットがある一方で、返済負担や希薄化など、気になるデメリットが存在するのも事実です。

    そこで、デメリットをカバーしつつ、メリットもキープできる 「RBF(レベニュー・ベースド・ファイナンス)」 という新しい資金調達方法を紹介します。

    デット・エクイティのデメリットをカバーできるRBFとは?

    RBFとは、過去の売上データや現在の財務状況から将来の収益を予測し、その一部を利用する調達手法です。

    RBFの特徴

    RBFの特徴として、①数億円までの大口での調達が可能、②手間と時間をかけずに調達可能、③希薄化一切なし、といったメリットがあります。また、将来の売上に対して審査・評価を行うため、銀行融資による調達が難しい場合でも活用が可能です。

    また、RBFは売掛債権のような確定した債権を売却するのではなく、将来発生する債権を用いて資金調達を行うため、支払い期間が長くなり、資金繰りの負担も軽減できます。

    他の調達手段と比較すると以下のような違いがあります。

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    こういった新しい資金調達の選択肢も活用しながら調達を行うことが、企業の成長をより加速させる鍵になります。RBFについて詳しく知りたい方は以下からお気軽にご確認ください!

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    デットでもエクイティでもない新たな資金調達手段でSaaS企業を支援

    Yoiiでは、このRBFの考えを基にしたSaaSやD2Cなどのスタートアップ企業に成長を加速するための独自のアルゴリズムを用いた未来査定型資金調達プラットフォーム「Yoii Fuel」を運営しています。

    Yoii Fuel

    「Yoii Fuel」を用いると、申請に保証や担保は不要・株式の希薄化を防ぐだけでなく、会計・決済システムと連携すれば、より簡単にかつスピーディー(最短6営業日)調達可能です。

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