23 May 2022
レベニュー・ベースド・ファイナンシング(以下、RBF)は、株式でも融資でもない新たな資金調達方法として注目を集めています(RBFについて知りたい方はこちら参照)。
Allied Market Researchの調査によると、世界のRBF市場規模は2019年に$901M(約900億円)に達しました。そこから急拡大を続け、27年には$42.3B(約4.2兆円)まで拡大すると予想されています。
20年から27年までのCAGRは61.8%に。特にアジア・太平洋地域のCAGRは65%と、世界で最も高い成長率となる見込みです。
そこで、RBFプラットフォーム「Yoii Fuel」を運営する弊社が、dealroomの情報をもとに世界のRBFスタートアップを追加で独自調査。カオスマップを作成しましたので、公開します。
カオスマップでは、地域・国別にRBFスタートアップをまとめました。調査の結果、全17か国で42社存在することがわかりました(もちろん、すべてを網羅できている訳ではありません)。
ここからは、RBFスタートアップの地域や設立年度、調達金額や主要プレイヤーについて紹介していきます。
地域別で見るとEMEA(欧州・中東・アフリカ)が最も多く(22社)、全体の半数以上を占める形となりました。イギリスを筆頭に欧州では多くのFintechスタートアップが誕生しており、RBFにも同様のトレンドがあると推察します。
欧州に拠点を置くRBFスタートアップは、2021年だけで$671Mもの資金をVCから調達。22年に入ってからも、WayflyerやKarmen、Silvrの3社だけで、すでに$220Mもの資金調達を行っています。
EMEAの代表格は、スペイン発スタートアップの「Capchase」。同社はMiguel Fernandez 氏(CEO)、Luis Basagoiti氏、Ignacio Moreno氏らによって、2020年に創業されました。
同社はSaaSをはじめとするサブスクリプション企業へサービス提供しています。必要なARRは$100K〜、審査にあたり6ヶ月以上の売上実績および3ヶ月以上のランウェイが必要とのことです。現在、3,000を超える顧客およびパートナーを抱えているとのこと。
現在は米国やカナダ、欧州(イギリス、スペイン、スウェーデン、フィンランド、デンマーク、オランダ、ベルギー)でサービスを提供中。今後は欧州を中心に徐々に拡大していくものと思われます。
22年3月に実施されたシリーズBラウンドでは、01 Advisorsをリードに$80Mを調達。デットも含めた累計調達金額は$549.6Mとなりました。RBFサービスを提供しているだけあって、デットとエクイティをうまく組み合わせて資金調達しています。
国別で見ると米国が最も多く(9社)、全体の2割を占めています。さすが世界一のスタートアップ輩出国ですね。ですが、2番目に多いイギリス(8社)とは僅差となっています。
米国およびイギリスにインド・ドイツ・フランスを足した5か国で計28社となり、全体の66%を占めています。スタートアップエコシステムが発達している先進国を中心に、RBFスタートアップが誕生していることがわかります。
設立年を見ると、8割以上の企業が2019年以降に設立されています。RBF自体、新しいビジネスモデルであるため、設立3年以内のスタートアップが大半を占めているのが実態です。
米国発スタートアップ「pipe」は、2019年に設立。Harry Hurst氏(Co-CEO)、Josh Mangel氏(Co-CEO)、Zain Allarakhia氏(CTO)によって共同創業された企業です。
Hurst氏とMangel氏は2014年、モバイルアプリを活用したレンタカーサービスのスタートアップ「Skurt」を創業。そして、18年に「Fair」という同業他社へ同社を$50Mにて売却した実績を持っています。
同社最大の特徴は、スタートアップと機関投資家を結びつけるプラットフォームということ。SaaSをはじめとしたサブスクリプション企業の将来売上に対して、機関投資家がオークション形式で値付けを実施。そして、落札できた場合、pipe経由でスタートアップへ資金が提供されます。
同社はあくまで仲介役という立場。スタートアップおよび機関投資家から一定の手数料を徴収するビジネスモデルとなっています。そのため、「Nasdaq for revenue(売上のナスダック)」と呼ばれることもあります。
Websiteを見ると、Intercom、DataRobot、AngelList、Slack、Oktaなどのリーディングカンパニーにも利用されているようです。
21年3月のラウンドでは、Greenspring Associates(CloudflareやDocusignなどに投資)をリードに$250Mを調達。評価額は$2.1Bとなりました。同ラウンドには、マーク・ベニオフ氏やSBIインベストメントも加わっています。
その後も複数回の資金調達を行っており、累計調達額は$566Mとなりました。過去のラウンドでは、OktaやHubspot、ShopifyなどのSaaS企業からも調達しています。
Crunchabseによると、累計調達額(デット含む)が100億円以上となっている企業は、すでに14社も存在。何かしらの方法で調達している企業(35社)の内、4割が3桁億円を調達している計算になります。
RBFはサービス提供にあたり、原資となる資金が必要となります。そのため、3桁億円を越えるメガラウンドが相次いでいます。大きな金額をいかに速く調達できるかが、競争優位性の1つとなりそうです。
また、Founders FundやSocial Capital、Sequoia Capitalなど、著名な投資家がRBFスタートアップへ出資していることも期待の現れと言えます。
累計調達額が最も大きいのは、カナダ発スタートアップの「Clearco」。マッキンゼー出身のAndrew D'Souza氏とシリアルアントレプレナーのMichele Romanow氏が2015年に共同創業した企業です。
同社の特徴としては、ECに特化しているということ。これまで資金提供した企業は7,000社以上、提供額は$3B以上。そして、女性への資金提供はVCの25倍以上だといいます。
ShopifyやFacebook広告アカウントと接続するだけで、最短48時間で$10K-20Mのオファーが来るとのこと。支払い方法は弊社と同じく「固定型」で、支払期日はありません。
21年4月に実施したシリーズCラウンドにて、Oak HC/FT(ヘルスケア・Fintechに特化したVC)をリードにCA$125Mを調達。評価額は$2B以上となり、ユニコーンの仲間入りを果たしました。
そして、その3ヶ月後には、SoftBank Vision Fundをリードに$215Mを調達。累計調達金額は$681.5Mとなりました。過去のラウンドではFounders FundやSocial Capitalなどの著名VCからも調達しています。
累計調達額(デット含む)TOP10のスタートアップを見ると、すべて欧米の企業となっています。今後はアジアからランクインする企業が現れるかもしれません。
主な株主には、Y CombinatorやFounders Fund、Andreessen Horowitzなど、世界のTop VCも含まれています。しかし、ローカルなVCや銀行などから調達している企業も多く、今後Top VCの参入が期待できるマーケットだといえます。
また、デットによる調達をしている企業も多く、やはりRBFスタートアップは希薄化を避けたいという意志が強いのでしょう。
欧米のRBF市場はすでに競争が激化しつつあります。イギリスに拠点を置く「Outfund」は、スペインの同業「Clicfunds」を買収。オランダの「Levenue」は、同国の「Requr」を買収するなど、市場の再編が起きはじめています。
冒頭で述べたように、APACのRBF市場は今後高い成長率が見込まれています。加えて、日本のプレイヤーは多くありません。
しかし、それはポテンシャルとも捉えられます。日本のSaaS/EC市場は着実に成長しており、それとともにRBFへの需要がますます高まっていくものと予想されます。
弊社が運営するRBFプラットフォーム「Yoii Fuel」は、主にSaaS / D2C企業が利用中。22年4月に正式版をリリースし、これまで数十社のスタートアップに活用されています。
Stripeやfreeeをはじめとする財務データと連携するだけで、売上実績から将来発生する売上を予測。将来の売上を買い取る形で、いま必要な資金を提供しています。主に広告宣伝費やブリッジファイナンスを目的とした資金調達に活用されています。
支払い方法は「固定型」。売上の増減に関わらず毎月一定額の支払いが発生します。売上高が減少した月は、売上に対する支払いのインパクトが大きくなります。一方、売上高が増加した場合はその逆となります。
そのため、毎月売上高が増加していくサブスクリプションビジネスを運営する企業や急成長中のスタートアップに適したサービスだといえます。
弊社は21年10月、シードラウンドにてインクルージョン・ジャパン、農林中金イノベーション投資事業有限責任組合、個人投資家より1億円を調達。さらに、22年2月にはエクステンションラウンドにて、dLab Group Limited、HiJoJo Partners、個人投資家より2,500万円を調達しました。
正式版リリース後、数多くのスタートアップよりお問合せいただいています。RBFのリーディングカンパニーとして、日本市場を牽引していきたいと思います。
Yoiiでは、このRBFの考えを基にしたSaaSやD2Cなどのスタートアップ企業に成長を加速するための独自のアルゴリズムを用いた未来査定型資金調達プラットフォーム「Yoii Fuel」を運営しています。
「Yoii Fuel」を用いると、申請に保証や担保は不要・株式の希薄化を防ぐだけでなく、会計・決済システムと連携すれば、より簡単にかつスピーディー(最短6営業日)に調達可能です。
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