大事なのはロジックとアクセス。融資支援担当者が語る、スタートアップが銀行借入において気を付けるべきこと|SEVENRICH × Yoii

    5 March 2025

    大事なのはロジックとアクセス。融資支援担当者が語る、スタートアップが銀行借入において気を付けるべきこと|SEVENRICH × Yoii

    先日、Yoii Fuelを提供する株式会社Yoii事業開発の田口は、以下の記事で、スタートアップによる銀行からの借入を支援する専門部隊である株式会社SEVENRICH Accounting ファイナンス事業部の溪(たに)さんと対談しました。銀行からの借入を支援する組織がRBFの活用を勧めるケースやビジネスモデル、銀行借入とRBFの使い分けについて議論しています。

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    本記事では、上記記事では語り尽くせなかった、スタートアップが銀行借入を実施する際のTipsや、気を付けておくべきことについて聞きました。

    金融機関を説得するためのスタートアップのロジック

    田口(Yoii):

    溪さんは元々メガバンクに勤務し、法人向け融資営業を経験していますよね。中小企業とスタートアップの融資に違いはありますか?

    溪(SEVENRICH):

    中小企業と一口に言っても様々ありますが、財務的に余裕があり安定的な事業を営んでいる中小企業とスタートアップ企業では、融資を受けるためのロジックを変える必要があります。

    スタートアップは一般的にリスクのある事業を運営していることもあり、「借りても大丈夫」というロジックを組み立てるのが大事になってきますね。

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    溪 晃太朗 | Tani Kotaro

    株式会社SEVENRICH Accounting ファイナンス事業部

    慶應義塾大学卒業後、メガバンクに4年半勤務。主に法人向け融資営業を経験後、 2023年、SEVENRICH Accounting融資事業部へジョイン。 現在は金融機関とクライアントを繋ぎ融資調達をサポートする業務に従事。 大切にしていることは、スピード感をもって仕事をすること。 座右の銘は、不退転。 強みは、瞬発力。

    田口(Yoii):

    どうしたら「これなら大丈夫」というロジックになるのでしょうか。

    溪(SEVENRICH):

    どんな場合でも「100%大丈夫」ということはなく、最終的には金融機関の判断になると断った上でお答えすると、「これまでの利益がこのくらいで、今後もこれが続く」といった内容を示せるのが最良かと思います。

    とはいえスタートアップなら利益が出ていない場合も多いですよね。その場合、仮にSaaSなら「現在の解約率がこれぐらいで、今後こういった施策を打って解約率を減らし、結果として会員数が増え、ひいては売上が増えていく予定です」といったように、定性的な部分も交えてロジックを積み上げるのがいいでしょう。

    銀行借入をする上で、資料の作成より大事なこと

    田口(Yoii):

    Yoii Fuelを運営していると「もうちょっと早く相談に来てほしかったな......」と思うケースが少なくないんです。SEVENRICHが支援する中でも似たようなケースはないですか?

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    田口 慧 | TAGUCHI Kei

    株式会社Yoii  事業責任者

    新卒でみずほ銀行に入行、中小企業向けの融資業務に従事。

    2016年よりデロイトトーマツコンサルティングの戦略部門(モニターデロイト)にて大企業における成長戦略・事業戦略の策定やオープンイノベーションの創出支援などのコンサルティング業務に従事。

    2023年2月よりYoiiに参画し、事業開発をリード。

    溪(SEVENRICH):

    ありますね。業績が下降していたり、ランウェイが残り1年もなかったりする中で融資を受けるのは簡単ではありません。

    逆に言うと、業績の良いタイミングで、「今はお金を借りる必要はないかな」と思っているときにこそ、借入の検討をすることが重要です。実績を作って返済し、信頼を重ねておくと、本当に困ったときに借りやすくなるという側面は事実としてありますからね。

    田口(Yoii):

    我々のような、銀行出身者からすると当然でも、この点はなかなか浸透しないですね。

    溪(SEVENRICH):

    そうなんですよね。我々も、業績が良いスタートアップに「今融資を受けたほうがいいかも」なんて話をしても「今借りる必要なんてないでしょう」と返されることは少なくありません。目先の資金を確保するという目的以外でも融資を受けたほうがいい場合があるという点は伝えていきたいですね。

    田口(Yoii):

    他にも、普段支援している中で「こうしたら融資を受けやすい」といったポイントがあれば教えてください。

    溪(SEVENRICH):

    まずは当然、黒字決算にすることです。

    田口(Yoii):

    利益を出すということですね。

    溪(SEVENRICH):

    はい。また繰り返しになりますが、仮に赤字だったとしても、赤字が黒字になるまでのストーリーを精緻に描くことを大事にしてほしいです。

    当然ながら「売上を大きくすれば赤字が解消する」といった説明だけでは十分ではありません。SaaSなら売上は1社あたり売上×顧客数で、顧客数は前年度の登録者数をベースに、広告費とCPA、解約率の関係からこのくらいになるはず。CPAはこうやって検証しました……ということを示せれば、金融機関が納得するストーリーになると思います。

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    田口(Yoii):

    SEVENRICHはそういった支援もしているんですよね。改めて、SEVENRICHの銀行融資支援の強みはどこにあるのでしょうか?

    溪(SEVENRICH):

    SEVENRICHには大きく2つの強みがあります。1点目は、融資を受けるための収支計画作成支援です。スタートアップの中には資金使途や計画を「ざっくりと」しか作っていない企業も少なくありません。じゃあ完璧な資料を作らないといけないのかというと、そういうわけでもない。金融機関向けの説明資料で大事なのは、ポイントを抑えた作成をすることです。

    「こういった資金使途なら融資を受けやすい」「運転資金としても認められやすい」「それを理解してもらうために、こういった説明をした方がいい」といったノウハウが貯まっているので、SEVENRICHはその観点からスタートアップを支援しています。

    もう1点は、そもそもどこの金融機関に融資の相談をしに行くべきかのデータをもっていることです。

    田口(Yoii):

    金融機関の融資は担当者次第で、条件やそもそも借りられるかどうかが大きく変わってきますからね。

    溪(SEVENRICH):

    その通りです。もちろん事業計画やロジックは大事なものの、そもそも融資を受けられる可能性の高い金融機関、支店、担当者にアクセスするのは非常に重要です。

    ただ、当然こんな情報は市場に出回っていません。しかしSEVENRICHはこれまでの豊富な支援実績から、適切な担当者を紹介できる、というわけです。

    田口(Yoii):

    「スタートアップの融資ならこの銀行のこの支店がいい」といった噂も耳にします。

    溪(SEVENRICH):

    そうですよね。でも担当者が代わったり、異動があったりするので、情報は常にアップデートし続けなくてはなりません。

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    大事なのは適切な金融機関へのアクセス

    田口(Yoii):

    そもそも、スタートアップに融資してくれやすい金融機関と、そうでないところは何が違うのでしょうか。

    溪(SEVENRICH):

    金融期間として「スタートアップにも融資していこう」と、トップが旗をちゃんと振っていて、その意思が現場にも落とし込まれているかが大事だと感じます。

    特に都心に支店を構えている地銀は各行で方針が異なります。「うちは大企業としか取引しない」「上場企業のシンジケートローンにしか参加しない」という金融機関もあれば、逆に「スタートアップには積極的に取引をして、そこからどんどん取引の幅を広げていく」という金融機関もある。スタートアップとしては当然、後者にアクセスしなければなりません。

    田口(Yoii):

    縁もゆかりもない地域の地銀にアクセスした方がいいケースもあるんですか?

    溪(SEVENRICH):

    あります。地銀によっては今時点でその地域と関係がなくても、事業の将来性によっては積極的に取引をしてくれるケースがあるんです。逆に、縁があってもそもそもスタートアップとは取引しない方針の金融機関にアクセスしても徒労に終わってしまいます。

    田口(Yoii):

    スタートアップ側のステージなどによって、アクセスする金融機関が変わるケースもありますか?

    溪(SEVENRICH):

    メガバンクより地銀の方が柔軟な動きをするというケースは少なくありません。例えばスタートアップは初期にシェアオフィスやコワーキングスペースで活動しているケースも珍しくありませんよね。しかしメガバンクはそういった会社は取り扱わないケースも多いんです。

    一方で一部地銀はその点に対して縛りを設けないケースがあります。また金額にしてもメガバンクが取り扱わない金額でも地銀は扱うということもあります。そう考えると、起業したばかりの場合は地銀との取引をオススメするケースが多いですね。

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    田口(Yoii):

    2025年初頭において、金融機関がスタートアップの融資を絞り始めているという噂を耳にしています。支援する立場としての実感を教えてください。

    溪(SEVENRICH):

    今まで積極的に融資していたものが、通常ベースに戻ってきているのではないかと感じています。またコロナ融資の返済も始まってきている中で、倒産する会社も一定程度出てきました。それで今は慎重姿勢が強まっているのではないでしょうか。

    田口(Yoii):

    スタートアップには辛いところですね。

    溪(SEVENRICH):

    そうですね。ただ例えば日本政策金融公庫はスタートアップへの融資の姿勢を変えていないので、やはり適切なところにアクセスして資金を調達することが大事だと思います。

    田口(Yoii):

    こちらの記事では、RBFの活用を勧めるケースや、銀行借入とRBFの使い分けについてディスカッションしました。それに加え今回は、スタートアップが銀行借入をする際のTipsもたくさん学べました。溪さん、今回はありがとうございました。

    溪(SEVENRICH):

    こちらこそ、ありがとうございました。融資の相談をしたいスタートアップはこちらからご連絡ください。

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    (執筆:pilot boat 納富 隼平、撮影:ソネカワアキコ)

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