デットファイナンスとは? スタートアップ向けに詳しく解説

    24 November 2023

    デットファイナンスとは? スタートアップ向けに詳しく解説

    資金調達を検討しているスタートアップの経営者の方であれば、デットファイナンスという言葉を聞いたことがあるかと思います。この記事では、スタートアップにとって有力な資金調達の手段であるデットファイナンスについて解説いたします。

    この記事のサマリ

    デットファイナンスの概要

    そもそも「デット」とは借金・負債を意味します。デットファイナンスとは、銀行融資や社債発行など、資本を借り入れることで資金調達を行う手法です。

    デットファイナンスのメリット

    ①経営に対する影響が無い

    デットファイナンスでは新株を発行しないため、新しい株主が増えたり、既存株主の株式比率が高まることはありません。経営陣が変わらず株式や経営権を所有できるので、経営に影響を及ぼさず、安全に資金調達できる手法と言えます。

    ②金融機関からの信用が向上する

    借り入れた資金を計画通りに返済できれば、返済実績ができるため金融機関からの信用が向上します。結果として、次回からより大きい金額、低金利などの好条件で融資を受けられる可能性もあります。

    ③節税効果がある

    デットファイナンスは借金であるため、元本に加えて利息も支払う必要がありますが、この利息は税務上「損金」として扱われ、法人税の対象外となります。借入金額が大きいほど、利息分の節税効果を期待できます。

    デットファイナンスのデメリット

    ①返済義務がある

    デットファイナンスで調達した資金は返済義務があるため、返済を意識しながら資金繰りを行う必要があります。返済できない場合は債務不履行とみなされ、

    などのリスクがあります。

    ②財務の健全性が下がる

    返済義務が無い資金を「自己資本」、返済義務がある資本を「他人資本」と呼びますが、デットファイナンスを行うと他人資本が増えるため、総資本の中で自己資本が占める割合(=自己資本比率)が下がります。

    自己資本比率が低いほど他人資本に強く依存しているため、財務基盤や経営としては不安定になります。

    もちろん「自己資本比率が低ければ必ず倒産する」というものではありませんが、デットファイナンスを行うことで自己資本比率が下がり、財務の健全性も下がるといえるでしょう。

    ③借り入れのハードルが高い場合がある

    デットファイナンスの最も一般的な資金調達手法として銀行から借り入れる方法もありますが、いくつかの理由により、スタートアップ(特に初期フェーズ)だと借り入れのハードルが高くなります。

    銀行からの借り入れが難しい場合、それ以外を頼るか、デットファイナンス以外での資金調達を検討する必要があるでしょう。

    デットファイナンスの手法一覧

    実はデットファイナンスにも手法がいくつかあります。ここでは、スタートアップでも使いやすい手法をご紹介いたします。

    公的融資

    政府が運営する金融機関からの融資です。一般的に、返済期限が長め、低金利など好条件で融資を受けられるのがメリットですが、申込から融資実行まで数ヶ月とリードタイムが長いのがデメリットです。

    最も有名なのは、日本政策金融公庫が提供する「新創業融資制度」です。創業間もない企業やスタートアップを支援するため、無担保、無保証人で資金を融資してもらえます。それ以外だと、商工組合中央金庫や日本政策投資銀行なども融資を行っています。

    銀行融資

    銀行など、民間の金融機関からの融資です。他の手法に比べて大きい金額の融資を受けやすいのはメリットですが、企業の売上実績や経営状況などを踏まえて審査を行うため、創業直後で実績が無かったり、赤字が続いている場合は融資を断られやすいなどのデメリットがあります。

    プロパー融資、信用保証付き融資、ビジネスローンといくつか種類がありますが、スタートアップでよく使われるのは信用保証付き融資です。企業の返済が困難になった場合、信用保証協会が立て替えて返済するという融資です。プロパー融資に比べて審査が通りやすい、担保や保証人が不要なことが多いなどがメリットですが、金融機関に加えて、信用保証協会にも手数料を支払う必要があるのがデメリットです。

    スタートアップが銀行借入を行うポイントについては以下の記事も合わせてご覧ください。

    スタートアップ向け銀行借入 虎の巻(前編)

    社債

    企業が資金調達のために発行する債券のことです。償還期限、利息などを企業側で柔軟に設定できるのがメリットですが、

    などのデメリットがあります。

    社債は大きく公募債と私募債の2つに分かれますが、前者は発行条件が厳しく、上場企業が発行することが多いため、スタートアップで一般的に発行されるのは後者です。私募債とは50人未満の少数の投資家に対して購入を呼びかけるものであり、公募債よりも発行が容易ですが、調達上限が1億円と定められており、公募債に比べて調達金額が少なめです。

    ベンチャーデット

    金融機関から融資を受ける代わりに、新株予約権を付与する方法です。新株予約権とは、予め決められた金額と条件で新株を取得できる権利のことです。転換社債、新株予約権付融資などの手法が挙げられます。

    他の手法に比べると融資までのリードタイムが短いことや、ベンチャー向けに作られた手法なので赤字や財政が悪い場合でも大きな金額を融資してもらえる可能性があるのがメリットですが、融資リスクが高い分金利も高いことやその後のエクイティファイナンスによる資金調達に影響を及ぼす可能性があるなどがデメリットです。

    また、ベンチャーデットはあくまで新株の取得権利を発行するだけであり、新株を直接発行するわけではないため、株主数の増加や株主の影響力増大を防げるメリットもあります。

    ソーシャルレンディング

    個人投資家などから資金を調達する方法です。「融資型クラウドファンディング」とも呼ばれます。企業と投資家をマッチングするプラットフォームを利用し、出資してくれる投資家を探します。

    金融機関からの調達に比べると早く資金調達できる、準備書類などが少ないのがメリットですが、金利が高めになりやすいのがデメリットです。

    エクイティファイナンスとの違い

    エクイティファイナンスとは、企業が新株などを発行し、株主からの出資を受けることで資金調達を行う手法です。

    デットファイナンスとエクイティファイナンスは、以下のような違いがあります。

    デットファイナンスエクイティファイナンス
    返済期限ある無い
    自己資本率下がる上がる
    株式の価値変わらない希薄化する
    株主の影響力変わらない高まる

    エクイティファイナンスについては以下の記事も合わせてご覧ください。

    エクイティファイナンスの概要やスタートアップ向けの調達手法の解説

    RBFについて

    ここまでデットファイナンスについて解説しました。スタートアップにとって有力な資金調達の手法ではあるものの、返済義務がある、借り入れのハードルが高いなどのリスクも持っています。

    最近ではそうしたリスクを解消した新しい資金調達の手法として、レベニュー・ベースド・ファイナンス(RBF)という手法が注目されております。簡単に説明すると、過去の売上データから将来の売上を予測し、将来の売上の一部を買い取る形で資金提供するという手法です。

    他のデットファイナンスのように個人保証や担保は不要で利用でき、資金調達までのスピードと手間が小さいといったメリットがあります。

    RBFについて詳しくは以下の記事をご覧ください。

    5分でわかる「レベニュー・ベースド・ファイナンス(RBF)」デットでもエクイティでもない新たな資金調達手段

    デットでもエクイティでもない新たな資金調達手段でSaaS企業を支援

    Yoiiでは、このRBFの考えを基にしたSaaSやD2Cなどのスタートアップ企業に成長を加速するための独自のアルゴリズムを用いた未来査定型資金調達プラットフォーム「Yoii Fuel」を運営しています。

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