SaaSスタートアップのための「RBF」利用ガイド

    20 October 2023

    SaaSスタートアップのための「RBF」利用ガイド

    スタートアップが成長していくために欠かせない資金調達において、株式や銀行融資での資金調達が一般的です。そんな中、SaaSスタートアップはそれらの資金調達手段と必ずしも相性が良いとは限らず、課題を抱えている企業も多いでしょう。

    そのようなSaaSスタートアップを中心に新しい資金調達手段であるレベニュー・ベースド・ファイナンシング(以下RBF。参考記事:「5分でわかる「レベニュー・ベースド・ファイナンシング(RBF)」デットでもエクイティでもない新たな資金調達手段」)の活用が広がっています。

    前回、D2Cスタートアップ向けに「D2Cスタートアップのための「RBF」利用ガイド」を公開しました。今回は、SaaSスタートアップにおけるRBFの活用シーンや活用するメリットなどについて解説します。

    1. SaaSスタートアップが抱える資金調達における課題

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    SaaS企業は一般的にサブスクリプション型の課金モデルを採用するケースがほとんどでしょう。

    SaaSビジネスの特徴として、初期のプロダクト開発やユーザー獲得のための先行投資に大きなコストがかかります。加えて、ユーザーの定着までに一定期間を要するため、収益化までに時間がかかるビジネスモデルとなっています。

    よくあるケースとして、まずフリーミアムやフリートライアルでユーザーを獲得し、その後の継続利用やプランのアップグレードによって収益化を図るケースが挙げられます。

    そのような状況では、ユーザーの継続利用を促すためにプロダクトの恒常的なサービス改善・機能追加などが必要となり、先行投資が多く発生することがあります。

    そのため、サービスイン初期はキャッシュアウトが激しくなる傾向があり、運転資金の確保が重要な経営課題となります。

    しかし、事業の初期段階では赤字経営が続くため、銀行から融資を受けることが難しくなる傾向にあります(担保になる資産が少ないビジネスモデルである点も、銀行融資のハードルを高くする要因となります)。

    そのため、創業初期は株式による資金調達に頼る必要が出てきます。ところが、株式による資金調達を実施すると、創業者の持分が希薄化するというデメリットが生じます。加えて、昨今の市況悪化(参考記事:スタートアップ調達環境の「現在地」)により、起業家が納得のできるバリュエーション(企業価値)が付きづらくなっていることも無視できません。

    そのような課題を解決する新たな資金調達手段として、RBFが近年注目されています。

    2. SaaSスタートアップにおけるRBFの有効的な利用シーンとメリット

    SaaSスタートアップがRBFを利用するメリットには、大きく2つあります。

    1つ目は、より小さい資本コストでまとまった資金を確保できることです。

    SaaS企業は運転資金を確保するために、年間契約で大幅にディスカウント(約15~20%程度、企業によっては30%以上のケースも)することで、顧客に前払いしてもらうことでキャッシュを確保しているケースも少なくないでしょう。

    このような状況でRBFを活用することで、より低コストで年間契約の前払いと同等の効果が得られ、運転資金を確保できます。

    2つ目は、必要な運転資金を前もって確保し、事業を伸ばすことができれば、次回のエクイティ調達時により大きな資金調達が期待できることです。

    RBFを活用し売上拡大のために資金投下することで、事業を成長させることができます。結果として、次回ラウンド時により高いバリュエーションがつき、大きな金額を調達できる可能性が高まります。

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    次に、SaaSスタートアップがどのようなシーンでRBFを利用することが有効的かを説明します。

    ①人材採用資金

    SaaS事業は、ユーザ数を増やすことが重要です。RBFで調達した資金を活用し、営業・マーケティング人員を採用することで、売上の拡大を加速させることができるでしょう。

    ②マーケティング資金SaaS事業は、ユーザ数を伸ばすために継続的なマーケティング活動が必要となります。RBFで調達した資金を広告宣伝等のマーケティング資金へ投下することで、売上を拡大させることができるでしょう。

    ③プロダクト開発費用

    SaaS事業は、ユーザの継続利用を前提としているため、常にサービスの改善や機能のアップデートが必要となります。RBFで調達した資金をプロダクト開発資金へ投下することで、ユーザの満足度向上やより高いプランへのアップグレードを促すことができるでしょう。

    上記で挙げたように、RBFで調達した資金は、顧客獲得のために活用することが最も効果的でしょう。売上が拡大すれば、更に大きな資金調達も可能となります。

    3. SaaSスタートアップにおけるRBFの活用事例

    株式会社EISHINの事例(インタビュー記事:手間なし・希薄化なし、200%事業成長を支えた新しい資金調達手段!

    株式会社EISHINは、採用活動をマーケティングの切り口で分析し、企業の採用を改善する「採用CXクラウド」を提供しています。

    資金調達に関して、そもそも人材業界はバリュエーションが付きづらい傾向があり、エクイティ調達だと資本コストが高くなってしまうため、極力銀行借入などのデットでの資金調達をしておりました。

    しかし、いわゆる「Jカーブ」を描くようなスタートアップは赤字経営が続く傾向があり、そのような状況だと銀行から理解を得られないこともあります。

    そんな中で、RBFも活用して資金調達し、主に事業拡大に向けた採用費として利用しました。約1年半ほどの期間で計4回ほど利用し、その間に事業および社員数も約2倍以上に拡大されました。

    結果として、その後エクイティでの調達も実施されました。

    まとめ

    今回はSaaSスタートアップ向けの新たな資金調達手段として、RBFの活用方法を紹介しました。

    デットでもエクイティでもない新たな資金調達手段でSaaS企業を支援

    Yoiiでは、このRBFの考えを基にしたSaaSやD2Cなどのスタートアップ企業に成長を加速するための独自のアルゴリズムを用いた未来査定型資金調達プラットフォーム「Yoii Fuel」を運営しています。

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