26 July 2022
景気後退入りの報道が連日のようにされる中、キャッシュフローや販売効率を見直すスタートアップも多いかと思います。不況に備えてランウェイを18-24ヶ月分確保すべきという意見もあり、資金調達を前倒しで実施している起業家も少なくないでしょう。
とはいえ資金調達のハードルは高まっているのでないか?と不安に感じている方も中にはいるはず。そこで今回は、世界のスタートアップや国内SaaSスタートアップにおける調達環境を明らかにしたいと思います。加えて、今後注目を集めると考えられる新たな調達手段を紹介します。
この記事のサマリ
CB Insightsによると、2022年第2四半期における世界のスタートアップ調達額は、前四半期比23%減の1,085億ドルとなりました。第1四半期は19%減だったことから、スタートアップの資金調達は更にスローダウンしていると言えます。
メガラウンド(1億ドル以上の資金調達)も減少。同期間のメガラウンドによる調達額は31%減の505億ドル(250件)と6四半期ぶりの低水準となり、減少率としては過去最低を記録しました。上場企業のバリュエーションが剥落していることから、主にレイターステージのスタートアップがその影響を受けていると考えられます。
投資家別にディールサイズを見ると、エンジェル投資家のみ21年より大型化。ヘッジファンドやPEファンドなどの機関投資家、事業会社による投資額が縮小しています。
これまでレイターステージのスタートアップを支えてきたヘッジファンド/PEファンドなどが、一斉にリスクマネーを引き上げています。第2四半期における投資件数はTiger Globalが引き続き首位となったものの、投資件数は前四半期比28%減の86件とペースが鈍化しています。
第2四半期に誕生したユニコーンは、前年比43%減の85社。こちらも6四半期ぶりの低水準となり、1年前の148社から激減しました。第2四半期に新たにユニコーンとなったSaaS企業には、ドキュメント自動化の「airSlate」、データアクセス管理の「Immuta」、公共交通機関向けSaaSの「Optibus」などが挙げられます。第2四半期時点でユニコーンは累計1,170社となりました。
Exit件数は前四半期比16%減の2,648件と、減速傾向が続きます。M&Aは16%減の2,502件と6四半期ぶりの低水準に。IPOは15%減、SPACは26%減と出口戦略を模索しているスタートアップも多いと考えられます。成長機会を失ったゾンビ・ユニコーンも少なくないはずです。
このようにユニコーンが増え続けていることから、「ユニコーンの価値」とは何かを考えさせられますね。著名VCのBessemerは、22年はケンタウロス企業(評価額$1B以上かつARR$100M以上)にスポットライトが当たるだろうと語っています。
グローバルの調達環境が悪化する一方、国内のスタートアップ市場はそこまで大きな影響を受けていません。第2四半期における調達額は前四半期比17.5%増の10.6億ドル、調達件数は7.3%増の338件となりました。21年ほど活況な状態ではありませんが、20年より高い水準となっています。
SaaS特化VC One Capitalのレポートによると、22年上半期のSaaSスタートアップ調達額は700億円。これは20年(通年)と同等の水準です。LegalForce(121億円)、SUPER STUDIO(43.5億円)、dotData(40.4億円)など大型調達が相次ぎ、SaaS市場は引き続き活況な状態が続いています。
しかし、エクイティファイナンスはリードタイム(3ヶ月〜6ヶ月程度)が存在するため、第3四半期以降に影響が出てくるかもしれません。また、1社あたり調達額が増加傾向にあることから、有望なスタートアップに資金が集まりやすくなっていると言えるでしょう。
SaaS企業のマルチプルは年初から大きく低下しました。同レポートによると、昨年末に約20倍を付けていたPSR(時価総額/売上高)は、現在5倍にまで下がりました。米金利上昇を受け、国内市場からもリスクマネーが一斉に引き上げられています。
VCのドライパウダー(ファンドの待機資金)が一定存在すること、3桁億円を越える大型ファンドが次々に組成されていることを考えると、国内の調達環境が悲惨な状況になるとは考えにくいです。
しかしエクイティ調達できるとしても、20-21年のようなバリュエーションで調達することはハードルが高いでしょう。調達額を小さくするか、希薄化率を高めるかという選択を迫られるかもしれません。そこで、デットでもエクイティでもない、新たな調達手段が注目され始めています。
スタートアップ調達環境における不確実性がますます高まる中、デットでもエクイティでもない新たな資金調達手段「レベニュー・ベースド・ファイナンス(RBF)」に注目が集まっています。
RBFは将来債権を売却することで、いま必要な資金を調達する方法です。将来の売上を予測しやすいSaaSなど、サブスクリプションビジネス事業者を中心に利用が広がっています。
RBFはエクイティファイナンスと異なり、株式の放出を必要としません。また、デットファイナンスとは違い、個人保証や担保も不要です。そのため、シード・アーリーステージのスタートアップでも気軽に利用できます。加えて、申込から審査、入金まですべてオンラインで完結するため、スピーディーかつ簡単に資金調達できる手段です。
RBFプラットフォーム「Yoii Fuel」を運営する弊社は22年2月、シードラウンドにて合計1.25億円の資金調達を発表。SaaSやD2C企業をはじめとするスタートアップへ成長資金を提供しています。
海外ではさらにRBF市場が盛り上がりを見せています。
スペイン発祥の「Capchase」は22年3月、シリーズBにて8,000万ドルを調達。その4ヶ月後にはデットにて4億ドルもの資金調達を行い、累計調達金額は9.4億ドルとなりました。その他にもアイルランドの「Wayflyer」、スウェーデンの「Ark Kacapital」、アメリカの「Settle」、イギリスの「Outfund」が今年だけで1億ドル以上の資金調達(デット含む)をしています。
アジアでも徐々に存在感が出てきています。香港に拠点を置く「Micro Connect」は22年3月、シリーズBにて7,000万ドルを調達。投資家には著名VCのSequoia Capitalも名を連ねています。インドの「Getvantage」にはドリームインキュベーターやソニーなど、日本の投資家も出資しています。
このように、22年に入ってからもRBFスタートアップの資金調達は活発に実施されています。調達環境の先行きが不透明な今だからこそ、RBFという新たな資金調達手段が多くのスタートアップを支援すると考えられます。
Yoiiでは、このRBFの考えを基にしたSaaSやD2Cなどのスタートアップ企業に成長を加速するための独自のアルゴリズムを用いた未来査定型資金調達プラットフォーム「Yoii Fuel」を運営しています。
「Yoii Fuel」を用いると、申請に保証や担保は不要・株式の希薄化を防ぐだけでなく、会計・決済システムと連携すれば、より簡単にかつスピーディー(最短6営業日)に調達可能です。
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