財務戦略とは? 〜資金調達のために設計すべきポイントを解説〜

    18 January 2024

    財務戦略とは? 〜資金調達のために設計すべきポイントを解説〜

    資金調達を検討しているスタートアップの経営者の方であれば、財務戦略という言葉を聞いたことがあるかと思います。この記事では、主に財務経験のない初心者の方向けに、スタートアップが資金調達を行う前に設計すべき財務戦略について解説いたします。

    この記事のサマリ

    財務戦略について

    財務戦略は目的や企業のステージによって様々ですが、アーリーフェーズのスタートアップの場合、資金調達や資金繰りのために、企業のキャッシュフローを管理する戦略として設計されることが多いです。

    スタートアップでよく使われるファイナンスの用語に資本政策がありますが、資金調達という目的は同じですが、資本政策は株式の持分比率やバリュエーションなどを管理する点が異なります。

    設計に必要なもの

    現時点・未来における毎月の支出・収入金額を把握できる資料が必要です。

    具体的には、以下のようなものがあると把握しやすいですが、もし無い場合は、毎月出ていく金額、入ってくる金額をExcelなどに入力する形でも構いません。

    設計の流れ

    ①毎月の支出や投資金額を把握する

    まずは実績ベースの損益計算書や入出金の明細を元に、実績ベースの収入・支出金額を把握します。

    それに加えて、事業計画書を元に、今後発生するであろう収入・支出金額を、半年〜1年スパンで把握します。

    翌月以降の数値は事業計画を元にした想定となりますが、もし事業計画と現状の実績に大幅な乖離がある場合は事業計画を参考にできないため、事業計画の見直しを検討する必要があります。

    ②キャッシュが必要なタイミングを把握する

    キャッシュが不足したり、大きく減少するタイミングを把握します。

    また、キャッシュの増加が一時的か、継続的かに注意する必要があります。

    例えば、銀行の借入返済などは単月で支出が大きく増えますが、その月までに資金を用意できれば問題ありません。

    一方で、

    などは継続的に支出が増え続けるため、増加した月以降も含めて、支払い資金を用意する必要があります。

    ③資金調達の手段を検討する

    必要な金額やタイミングに応じて、必要な手段を検討します。

    資金調達の手段は

    など色々ありますが、手段ごとに特徴が異なります(下図参照)。

    各手段の特徴は別の記事で解説していますので、本記事の最後にご紹介します。

    financial-strategy-2.png

    Yoii Blog「スタートアップ経営者のためのデットファイナンスの活用ガイド 〜銀行借入、ベンチャーデット、RBFの実践的比較〜」より

    財務戦略のシミュレーション

    簡易的なモデルケースとして、以下のような企業を想定しましょう。現在が1月であり、半年後の6月までのキャッシュフローを表にまとめています。

    ※説明のため、項目は簡略化しています。

    financial-strategy-3.png

    上の表を見ると、4月に銀行の借入返済、人件費の大幅増加があるため、残高が大きく減少することが予想されます。

    また、4月以降は人件費や広告宣伝費も増え、事業成長を加速させたいフェーズなので、さらに支出が増えると予想されます。

    よって、短期的には4月に資金が尽きないように、長期的には5月以降も尽きないように資金を調達する必要があります。

    今回は、3月までに大型の資金調達を行うのは間にあわないので、

    と仮定します。

    調達を反映したキャッシュフローの表は以下の通りです。

    financial-strategy-4.png

    この後、具体的な資金の調達先を検討しますが、注意すべきは資本政策との兼ね合いです。

    資金繰りの心配が少ない調達方法は2,400万円分の新株を発行することですが、外部株主の影響力が増える、株価が下がるなどのリスクがあり、資本政策に影響を与えかねません。

    一方、2,400万円全てを銀行から借り入れようとすると、返済の義務があるため、資金難が将来的に再び訪れることになります。

    そのため、資金調達の方法は資本政策と資金繰りのバランスを見ながら設計する必要があります。詳しくは資本政策の記事もご覧ください。

    今回は

    と仮定します。

    その後、決定した資金調達の方法に合わせて

    など、資金調達に向けてのネクストアクションを計画・実行していきす。

    以上が、財務戦略設計の一連の流れとなります。

    資金調達の手段の紹介

    ここまで財務戦略の設計について説明しました。具体的な資金調達の手段については、以下の記事をご覧ください。

    エクイティファイナンスについて詳しく知る

    デットファイナンスについて詳しく知る

    また、最近ではレベニュー・ベースド・ファイナンシング(RBF)という新しい資金調達の手法もあります。簡単に説明すると、過去の売上データから将来の売上を予測し、将来の売上の一部を買い取る形で資金提供するという手法です。

    RBFについて詳しくは以下の記事をご覧ください。

    RBFについて詳しく知る

    デットでもエクイティでもない新たな資金調達手段でSaaS企業を支援

    Yoiiでは、このRBFの考えを基にしたSaaSやD2Cなどのスタートアップ企業に成長を加速するための独自のアルゴリズムを用いた未来査定型資金調達プラットフォーム「Yoii Fuel」を運営しています。

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