17 October 2025
事業の成長に合わせて資金をどのように確保するかは、経営者にとって重要な課題です。設備投資などで大口の資金が必要な際に、銀行融資は低い金利で調達できる心強い味方となります。
一方で、銀行融資にはメリットだけでなくデメリットもあります。短所をあらかじめ把握しておけば、銀行の審査に落ちたり、融資を受けて返済に困るリスクを避けることも可能です。
この記事では、銀行融資の仕組みや特徴を整理し、メリット・デメリットをわかりやすく解説します。
銀行融資を活用するコツは、状況に応じて他の資金調達方法を組み合わせることです。銀行融資と他の資金調達手段との比較や、同時に使いこなす活用法についても、この記事で紹介します。
銀行融資は、事業の成長や安定に欠かせない資金を受け取るための手段です。銀行融資の仕組みや使い分け方など、基本的な知識を解説します。
銀行融資は事業目的の資金を金融機関から受け取る方法です。 個人または法人名義で、銀行からの借り入れを受けられます。
融資を受けるためには、銀行の審査を通過することが必要です。法人の場合、決算や資金繰り表、事業計画の実現性を中心に評価されます。
法人は個人への貸し出しと比べて融資枠が広く、より多くの金額を調達できる傾向にあります。 融資額が高いのは法人の方が個人より事業規模が大きいためです。あくまで実績や事業計画をもとに、融資額は決まります。
一方で個人事業主の場合は、確定申告書や信用情報の履歴など、事業・個人に関する状況をともに見られます。
銀行融資と似たような資金調達の方法として、借入やローン、出資などがあります。 いずれも必要な資金を調達するための方法です。ただし、これらの方法はそれぞれに異なる特徴があります。
3つの方法の特徴を、表にまとめて比較しました。
資金調達方法 | 返済義務 | メリット | デメリット・リスク | 主な利用形態・特徴 |
---|---|---|---|---|
出資(株式発行) | なし | 返済不要。長期にわたり安定的な資金を確保できる。 | 株主への配当金支払いが必要になる場合がある。経営権を株主に渡すことになる。 | 株式を発行して資金を調達する。 |
借入(銀行融資) | あり(元本+金利) | 事業資金をまとまった金額で調達できる。 | 計画に従って返済する必要がある。審査に時間を要する場合が多い。 | 主に中〜長期の事業資金調達に利用される。 |
ローン | あり(元本+金利) | 少額で迅速な資金調達が可能。 | 計画に従って返済する必要がある。融資と比べると枠が小さく、金利は高い傾向にある。 | 個人消費向けや短期的な資金調達に利用される。 |
方法ごとにメリットとデメリットを把握し、状況に応じて適した手段を選ぶのが重要です。
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資金を使う目的に合わせて、銀行融資の返済期間や契約内容が変わります。主な目的としては、下にあげる3つの用途に分類できます。
融資の目的 | 資金の用途の具体例 | 特徴 |
---|---|---|
運転資金 | 仕入れ・人件費・外注費など、日々の出費を支えるための資金。 | 短〜中期で利用するケースが多い。 |
設備資金 | 機械や工場、システム導入など、回収に時間がかかる設備投資にあてる資金。 | 中〜長期で利用し、投資回収を前提とする。 |
不動産融資 | 土地・建物の取得や改修を目的とする資金。 | 対象となる物件が担保となることが一般的。 |
資金の使いみちに応じて、契約内容や融資の条件は異なってきます。資金調達する目的を、あらかじめ整理しておきましょう。
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銀行融資には、他の資金調達手段にはないメリットがあります。銀行から融資を受けるメリットは、以下の4つです。
それぞれのメリットを解説しましょう。
銀行融資は大口の資金を安定的に得られる点で、大きな強みがあります。
融資審査を通過すれば、まとまった資金を受け取れます。長期にわたる設備投資や新規事業に向けた資金調達にも対応可能です。
銀行融資を利用すれば、経営権も安定できます。株式を相手に渡すことなく資金を調達できるため、他の株主から経営に口を出されるリスクがありません。
腰を据えて事業を伸ばしたいと考える経営者にとって、銀行融資は安心して使える資金調達の手段です。
銀行融資は他の資金調達手段に比べて金利が低く、返済期間が長めに設定できるのもメリットです。
ノンバンクやカードローンによる借り入れと比べると、銀行融資は金利が低く、資金調達にかかるコストを軽減できます。
返済期間も数年から10年以上に設定することが可能です。事業の成長に合わせて資金繰りを安定させつつ、計画的に返済できます。
成長の途中にある企業にとって、安心して事業を進められる大きな後押しとなります。
銀行融資は、法人と個人事業主のどちらも利用可能です。
個人事業主向けの融資は、確定申告書や本人の信用情報など、生活状況も含めて審査されます。
法人向け融資は、決算書などの財務書類や事業計画をもとに審査されます。法人は個人よりも事業規模や資金需要が大きい傾向にあり、必要に応じて融資金額も多くできます。
自社の事業ステージや業態に合わせて柔軟に利用できる点が、銀行融資の魅力です。
銀行と継続的に取引を続ければ、信用力が高まり追加の融資を受けやすくなります。
スケジュール通りに資金を返済し、定期的に業績を報告することで、銀行との信頼関係を強められます。
信用力が高まれば、金利や融資条件の優遇を受けられるようになります。必要に応じてすぐに、追加で融資を受けられる可能性が高まります。
銀行融資は単なる資金調達ではなく、「信用力を積み上げる投資」と解釈することも可能です。
銀行融資はさまざまなメリットを持つ一方で、以下にあげるような欠点を持っています。
銀行融資のデメリットについても一つずつ解説します。融資を受ける前に、短所をきちんと把握しておきましょう。
銀行融資は、審査に必要となる書類を準備するのに大きな負担が生じます。これが銀行融資を受ける最初のハードルです。
法人向け銀行融資であれば、決算書や登記事項証明書など、多くの資料が必要です。事業計画書も単なる願望ではなく、根拠のある売上予測や資金繰りのスケジュールが求められます。
書類の準備が足りていないと、それだけで審査に落ちる原因となります。融資を受けるには日頃から会計・税務まわりを整え、各種書類やデータを整理しておくことが必要です。
銀行融資は金利が低めであるとは言え、返済計画によっては将来の資金繰りに大きな影響をおよぼします。
計画の見通しが甘いと、予期しない理由で返済に困る場合も生じます。例えば、予想以上に売上が落ち込む局面を迎えると、事業の利益を圧迫するおそれもあります。
金利が低いから大丈夫と思いこまずに、将来のシナリオを複数想定して、資金計画を立てる準備が欠かせません。
融資条件によっては、資金を調達できたにもかかわらず、経営上の自由度が小さくなる場合もあります。
例えば、融資を受けたために、銀行からのモニタリングが強まる状況が考えられます。事業が予定通り進まず返済に不安があると見なされると、経営方針に関してコメントや融資条件が加わるケースも多いです。
「今回の融資は設備投資のみ使用可能」といった制限が付く場合もあります。用途を限られると資金が自由に使えず、窮屈さを感じる瞬間もあるでしょう。
銀行融資では担保や保証人を付けることが条件となる場合が多く、契約内容には注意が必要です。
例えば、自社の不動産や設備などを担保に差し入れるよう求められる場合があります。
法人の代表者が個人として保証人となる「代表者保証」を求められるケースも少なくありません。 代表者保証とは、会社が返済不能となった際に、代表者が個人資産で支払いをする責任を負う制度です。
ただし、代表者保証を見直す動きもあります。「経営者保証に関するガイドライン」が定められ、以下の3要件を満たせば代表者保証なしで融資が受けられるよう推奨されています。
引用:中小企業庁「経営者保証」
担保や保証人を設定すれば、より良い条件で融資を受けやすくなります。しかし、返済が滞った際には資産や個人の生活に影響がおよぶリスクもある点も認識しておきましょう。
銀行融資は時間をかけて慎重に審査が進められるため、申し込んだその日に資金を受け取るのはほぼ不可能です。
銀行は融資するか否かを決める際に、決算書や確定申告書、資金繰り表など、さまざまな情報を活用して企業の健全性を確認します。事業計画の実現可能性や経営者の姿勢も重視されます。したがって、融資審査は数日から数週間かかるのが一般的です。
慎重な審査は、規模の大きな事業資金を貸すために欠かせません。しかしその裏返しとして、急な資金需要が生じた場合は、銀行融資では対応が難しいです。
資金繰りで急を要する場合は、ビジネスローンやファクタリングなど、銀行融資以外の手段を考える必要があります。
銀行融資を受けた後も、単に資金を受け取って終わりではありません。返済や資金の活用方法によって経営の成果が大きく変わります。融資後に意識すべきポイントを解説しましょう。
銀行融資を受けた後でもっとも重要なのは、返済スケジュールを管理しつつキャッシュフローを安定させることです。
融資を受ける前には必ず返済シミュレーションを作りましょう。毎月の入金サイクルと支払い日を照らし合わせて、無理のない計画を立てることが必要です。
売上の波がある事業では、余裕のある時期に資金を積み立てておくと、収益が落ち込んでも計画通りに支払いを続けられます。
銀行融資を受けたら、資金をどのように使うかで事業の成長度合いが大きく変わります。
設備投資や人材採用など、将来の収益を生む分野で資金を活用するのが望ましいです。 売上の拡大につながり、返済コストを上回る成果につながります。
一方で、慢性的な運転資金不足を補填するために融資を受けるのは避けましょう。返済の負担だけが残り、事業の伸びしろを生み出せないおそれがあります。
事業環境が変わってきたら、追加融資や返済条件の見直しを銀行と交渉できます。
追加融資を希望する場合は、直近の業績や資金繰りの改善策をまとめ、銀行に「融資すべきと感じられる計画」を示すことが大切です。
返済が難しくなった場合には、早めに銀行へリスケジュール(返済計画の変更)を申し出ましょう。 その際には経営改善計画を作成し、再建の見込みがあることを伝えます。
銀行融資は一度契約したら終わりではありません。状況に応じて相談・交渉できる関係を築いていくと、経営の安定につながります。
先ほども説明したとおり、融資を受けた後も銀行との信頼関係を深めるのは重要です。こまめな情報提供を融資元の銀行へ続けることが、信頼関係を深める鍵になります。
返済状況や業績の報告を定期的に行い、銀行担当者に安心して支援できる相手であると伝えるのが重要です。
新規事業や設備投資など、経営に大きな変化がある際は、事前に相談しておきましょう。信頼を得ながら、追加で支援も受けられるチャンスにつながります。
トラブルや資金繰りの悪化も隠さず早めに共有すれば、長期的には信頼を積み上げられます。 アフターフォローを怠らないことが、信用の向上に直結するのです。
将来的に大きな融資を受けたいと考えるなら、信用を高める日常の取り組みが欠かせません。
複数の銀行と相談・取引で実績を作り、関係を広げておくのは有効です。 こうした実績は、信頼の積み重ねとして評価されます。
また普段から、決算内容の改善や自己資本比率の向上を意識しましょう。健全な財務体質は、銀行にとって安心して融資できる材料です。日本政策金融公庫による融資や、政府からの助成金を活用した実績も、経営者・事業に対する信頼を示してくれます。
▶︎関連記事:日本政策金融公庫では、スタートアップ支援の一環として創業融資を実施しています。創業融資について知りたい方はこちらの記事もお読みください!
急ぎで資金を調達したい場合は、銀行融資だけでは対応できないケースがほとんどです。そこで注目されるのが、将来の売上予測に応じて資金を調達できるRBF(レベニューベースドファイナンシング)です。
銀行融資とRBFの違いを比べると、下の表にまとめられます。
比較項目 | 銀行融資 | RBF(レベニュー・ベースド・ファイナンシング) |
---|---|---|
資金調達のスピード | 審査に数日〜数週間は時間がかかる | 審査から入金まで最短4営業日と速い |
資金調達に必要な条件 | 担保や代表者保証が必要な場合あり | 将来の売上見込みが必要(担保・保証人は不要) |
コスト | 金利が低く、低コストで資金調達できる | 手数料率は銀行融資よりやや高めになりがち |
調達できる金額規模 | 大口の資金調達が可能(工場・設備投資など) | 数百万〜数億円の調達が可能 |
利用に適した場面 | 大規模なプロジェクトや長期的な設備投資 | 広告投資・在庫仕入れなどさまざまな用途に使用可能 |
銀行融資とRBFを比較しながら、2つの資金調達手段をどう使い分け、活用するかを紹介しましょう。
RBF(レベニュー・ベースド・ファイナンシング)は、将来の売上予測をもとに資金を調達できる仕組みです。 資金を受け取ったら、調達額と利用料率をもとに定められた金額を毎月支払います。
例えばEC事業やSaaSビジネスなど、毎月安定した売上が見込める業態で活用しやすい仕組みです。急ぎの広告投資や在庫仕入れの資金も調達可能です。
銀行融資の特徴を振り返ると、低コストで大口資金を安定的に得られる一方、スピードや柔軟性には欠ける方法と言えます。
メリットは、金利が低く、返済期間も長期で設定できる点です。計画的な資金繰りが可能になります。
一方で銀行融資のデメリットは、審査が厳しく時間がかかるため、急な資金需要には対応できない点です。担保や保証人を求められることも多いです。代表者保証が条件になる場合もあり、経営者個人にまで責任がおよぶリスクが生じます。
RBFのメリットは、毎月の支払い額が固定され資金計画が立てやすく、月次のキャッシュフロー管理がしやすい点です。担保や保証人は必要なく、審査から入金までのスピードが速い点も魅力的です。
一方でデメリットとして、手数料率は銀行融資でかかる金利よりやや高めになる傾向にあります。また、将来の売上がある程度安定して見込める法人でなければ、サービスを利用できません。
銀行融資とRBFは力を発揮できる場面が異なるため、両方を組み合わせることで事業の成長につながります。
例えば、広告への投資や在庫仕入れなどで短期的に資金を必要とする場合、RBFを活用するのが効果的です。審査が速く担保・保証人も不要なRBFであれば、スピーディな事業展開につなげられます。
一方、工場の拡張や大規模なシステム導入など、大口の資金調達には銀行融資が適しています。低い金利で長期にわたり返済を続けられるため、借入コストを小さくして収益をあげやすくなります。
まとめると、
という流れでお互いの方法を活かしあえます。
銀行融資は、大口の資金を低い金利コストで調達できる、大きなメリットがあります。一方で、審査の厳しさや書類準備の負担、担保や保証人が必要となる、などデメリットがある点にも注意しましょう。
自社の成長段階や資金需要に合わせて、銀行融資と他の方法を柔軟に組み合わせられれば、事業を迅速に大きく伸ばすことが可能です。
急ぎの資金が必要だったり、開業直後しばらく経ってで事業をさらに勢いよく広げたい たい場面では、銀行融資を受けるのは難しくなります。最短4営業日で着金できるRBF(レベニュー・ベースド・ファイナンシング)など代わりの手段を検討するのがおすすめです。
一般社団法人 全国銀行協会「「経営者保証に関するガイドライン」とは」
中小企業庁「経営者保証」
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