エージェンティックコマースとは? AIエージェント決済のいまと今後の備え方を解説

    2026年08月27日

    エージェンティックコマースとは? AIエージェント決済のいまと今後の備え方を解説

    「AIで買い物をする人が増えていくらしい。これから自社の商品がどう探されて、どう買われるようになるのかが想像できない」

    「検索では上位に出ていた自信のある商品が、AIの回答には出てこない。AIが広まると自社製品を買ってもらえなくなると心配している」

    こうした戸惑いが、EC・D2Cの現場で広がっています。

    AIに商品を探してもらうだけではなく、AIが購入や支払いまで代行する仕組みづくりが海外を中心に進んでいます。日本でも取引事例が生まれ始めている状況です。

    集客の入り口や取引の仕組みはどう変わるのか?対応にいくらかかり、資金をどう用意すればよいのでしょうか?

    この記事ではIMFが2026年に公開した資料を手がかりに、AIエージェントによる取引・決済の現状や、安全性、事業への影響、コストと資金の考え方をわかりやすく解説します。

    読み終える頃には、ニュースに振り回されず、自社の集客や手数料がどう変わり得るか、対応する費用の目安や資金調達の選択肢まで見通せるようになります。

    年末商戦や来期に向けて、AIによる取引・決済をどう使うかの方針を決める前に、ぜひ最後までご覧ください。

    エージェンティックコマースとは?決済は「クリックして支払う」から「AIに任せる」へ

    エージェンティックコマース(Agentic Commerce)とは、AIエージェントが買い物を代行する新しい取引の形です。利用者に代わってAIが、商品の検索や比較から、購入および決済までをほぼ自分の判断で進めます。

    身近な例として、「あるテーマの新しい本が出たら、どのプラットフォームでもいいので一番安いところで買っておいて」という指示を考えてみましょう(IMF、2026)。

    指示を受けたAIエージェントは、

    ます。目的と条件だけを伝えれば、後の手順はAIが組み立ててくれるのです。

    ここでいうエージェント型AIとは、目的を解釈し、複数の手順を計画し、ほとんど人間の介入なしに実行するAI を指します。この動きのうち、とくに決済の側面を指して「エージェンティック決済」「AIエージェント決済」と呼ばれることもあります。

    IMF (2026)は、この変化を 「click-to-pay」から「decide-to-pay」への移行 と表現しています。これまでは、人が自分ではっきりボタンを押して取引を始めていました。今後は、AIに条件と目的を伝えて、支払いの判断を委ねる形へと移り変わっていきます。

    agentic-commerce-payment-guide_02.png
    「クリックして支払う」購買フローと「AIに任せる」購買フローの比較、図は筆者により作成

    ただし現状では、買うかどうかの確認と最終決定に、人が関わるケースが一般的です。

    それでも、2026年4月にIMFがこの資料を公表したこと自体が、エージェント型AIと決済を金融システムの重要な論点として扱い始めている証しです。

    AIエージェント決済はどこまで実用化しているのか

    AIエージェント決済の実用化はまだ初期段階です。ただし、

    など、動きは着実に進んでいます。 日本でも少しずつ、実際の決済取引も動き始めました。

    大手テック・決済各社は取り組みを相次いで進めている

    OpenAI、Amazon、Google、Visa、Mastercard、PayPalといった大手が、2026年前半までにAIエージェント経由の買い物・決済の取り組みを進めています。

    IMF (2026)はこれらの取り組みを 「初期の証拠」 と位置づけ、確立され標準化された仕組みではなく、生まれつつある設計パターンを示す実験だとしています。

    消費者がAI画面で購入する実験では、OpenAIがStripeと共同で、ChatGPT内で購入が完結する「インスタントチェックアウト」を2025年9月に発表しました。

    ところが2026年3月24日、OpenAIはこの方針を転換します。ChatGPTは商品の発見に注力し、決済は加盟店自身が持つシステムに任せるよう切り替えました。

    Shopify加盟店による導入が十数社にとどまり、在庫や送料に関する情報がきちんと反映されなかったことが背景にあると報じられています。

    AI画面のなかで決済まで完結させる構想は、技術的に不可能だったのではなく、事業者側の運用が追いつかなかったということです。なお、一部の対象商品・加盟店では現在も表示される場合があり、日本は当初から未対応です。

    OpenAIとShopifyの取り組み以外にも、さまざまな動きが進んでいます。たとえば、次の表のような取り組みが挙げられます。

    企業・取り組み段階
    消費者がAI画面で購入OpenAI×Stripe インスタントチェックアウト初期版は2026年3月に縮小・方式転換。一部の対象商品・加盟店では現在も利用可能。日本は未対応
    消費者がAI画面で購入Amazon Buy for Me米国のShop Direct対象商品で提供中。2026年5月にRufusからAlexa for Shoppingへ改称・統合
    消費者がAI画面で購入Google UCP・ネイティブチェックアウト2026年1月開始。米国先行
    カード網の認証・統制Visa Intelligent Commerce試験・提供
    カード網の認証・統制Mastercard Agent Pay試験・提供
    取引基盤PayPal(Cymbio買収)2026年2月完了

    裏側では「AIエージェント用の共通言語」の整備が進む

    各社の動きの裏側では、AIエージェントと決済インフラをつなぐ共通のルールづくりが急速に進んでいます。中心にあるのは2つのプロトコルです。

    ACP(Agentic Commerce Protocol) は、OpenAIとStripeが共同開発した「買うため」の規格です。買い手、買い手のAIエージェント、事業者の3者をつなぎ、購入の手順をそろえます。

    インスタントチェックアウトの基盤として、ACPが発表されました。先ほど触れた方針変更の後も、仕様の拡張が続いています。個々のサービスが小さくなっても、規格そのものは生き残っています。

    AP2(Agent Payments Protocol) は、Google主導の「支払う権限」に関する規格です。権限の範囲や上限、誰が実行したか、どんな条件なら支払ってよいかを、後から暗号で確かめられる形にまとめて証明します。

    エージェントが勝手に判断したのではなく、利用者が自分で与えた権限の範囲内であることを、下流の決済側が確認できるようにする仕組みです。

    これら2つの仕組みは対立するものではなく、互いに足りないところを補う関係にあります。ACPにも権限の渡し方を扱うルールが含まれるなど、機能が完全に分かれているわけではありません。このほかにも、MCP、A2A、x402といった規格が並行して整備されています。

    読者にとって重要なのは、規格づくりが進んでいるという事実です。業界のインフラ化が始まっている証しであり、動向をこまめに見るべき段階に来ているといえます。

    日本でも「本番環境」での取引が始まっている

    日本でも2026年5月20日、Mastercardと三菱UFJニコス等が、国内初となる本番環境でのエージェンティック取引を実施しました。

    複数の会社が発行するカードと、Mastercard Payment Passkeysで保護されたトークン化認証情報が使われています。トークン化認証情報とは、実際のカード番号の代わりに使える代替のデジタル情報で、加盟店やAIエージェントにカード番号を開示せずに決済できるようにしたものです。

    テスト環境のデモではなく、実際に決済が成立する環境で行われた点が重要です。つまり、エージェンティックコマースは「海外の未来の話」ではありません。

    ただし、消費者向けサービスとしての普及はこれからです。ChatGPTのインスタントチェックアウトは、日本は未対応のままです。Googleのネイティブチェックアウトも米国で先行リリースされています。

    インフラ側が先に整い、消費者向けの入り口が徐々に開いていく、という流れになるでしょう。

    IMFの資料が示す3層モデル「AIに判断させ、支払いはルールどおりに実行」

    安全性の鍵は、AIが判断する部分と、ルールに従って認可し実行する部分を分けることにあります。

    「AIに決済まで任せて大丈夫なのか?」という当然の疑問に対し、IMF (2026)が示す考え方のポイントである3層モデルが答えを示しています。

    IMFの3層モデルとは?

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    IMF (2026)が示す考え方の根底にあるのは、決済のプロセスを

    「AIが判断する層」
    「ルールで確認する層」
    「そのとおりに実行する層」

    の3つに整理するアイデアです。

    第1層は、意図の解釈と手続きの組み立てを担います。利用者の目的をAIが読み取り、検索や比較、交渉、手続きなどを組み立てます。利用者が望む商品を見つけるために柔軟に動きますが、承認も実行もしません。

    第2層は、支払いの制御と承認を行います。以下に挙げる条件が、定められたルールどおりかどうかを確認する関所です。

    AIが「買いたい」と判断しても、条件を満たさなければ承認を通しません。

    第3層では、決済と清算を仕上げます。承認済みの支払いだけを、銀行間決済やカードネットワーク等で実行します。指図を変えたり、最適化したり、読み直したりせずに決済のみを実行し、後から取り消せないよう確定した記録として残します。

    性質担うこと
    第1層 意図・オーケストレーション同じ入力でも答えが変わり得る目的の読み取り、検索や比較、交渉、手続きの組み立て
    第2層 制御・承認ルールどおりに、ゆらぎなく確認する上限、利用先、回数、身元、権限の範囲などがルールどおりかの確認
    第3層 決済・清算決まったとおりに、ゆらぎなく実行する承認済み支払いの実行、取り消せない記録としての確定

    この分け方の背景には、はっきりした問題意識があります。AIの判断は確率的で、同じ入力でも答えが少しずつ変わります。一方で決済には、以下の要件が必要です。

    IMF (2026)は、確率的にぶれる判断を上流に集め、下流における認可と実行はルールどおりの動きに保つという設計を示しました。

    危ないのは確率的なAIを決済に使うこと自体ではありません。十分なチェックや検査、誰が責任を負うかの仕組みがないまま、取り消せない支払いを実行させることだと、IMF (2026)は整理しています。

    ただし3層モデルは、既存のすべての決済システムを説明したものではありません。あくまでIMF (2026)が分析のために示す設計上の考え方です。安全を保証するための完成した仕組みではない点に注意しておきましょう。

    エージェンティックコマースの危険性にどう備えるのか

    IMF (2026)が本文とリスク分類表で扱うリスクは11項目に及びます。そのうち事業者が押さえておきたい代表例は、次のとおりです。

    注目すべきは、IMF (2026)がリスクを並べるだけで終わっていない点です。どのような備えが必要かについても解説されています。

    IMF (2026)が示す対策のうち、事業者が知っておきたいものは次の4つです。これから対応を進める事業者は、まずこれらの点を意識して準備を進めるとよいでしょう。

    備え内容
    エージェント確認(Know Your Agent, KYA)顧客の本人確認にあたるKYCに対し、エージェント側の確認を指します。エージェントの確かめられるIDを、背後の会社などに結び付けたうえで、身元と任せた権限の両方を確かめます。
    段階的な人の関与高額やリスクの高い取引では、人の承認を必須にします。すべてを人が確認すると自動化の利点が失われるため、取引の重要度に応じて使い分けます。
    キルスイッチ異常時にエージェントの動きを止めます。ただし設計の悪いキルスイッチは、止まると全体が止まる一点や攻撃の的になるため、段階的な対応と分けて配置することが求められます。
    監査記録AIが何を参照し、なぜその取引を提案したのかを後から確かめられるようにします。

    AIエージェント決済でEC・D2C事業者のコマースビジネスはどう変わるのか

    EC・D2C事業者には、

    という4つの面で変化が及び得ます。

    IMF (2026)の内容を、EC・D2C事業の実務に使える形へと、解きほぐしていきましょう。

    【変化1】集客の入り口が検索・広告からAIエージェントに移行

    最も大きな変化は、顧客との最初の接点が、検索エンジンや広告からAIエージェントに置き換わっていく可能性です。

    AIエージェントが商品検索・比較・購入までを代行するようになると、顧客は個々のECサイトを開かないまま購入できます。GoogleのネイティブチェックアウトはAI画面を離れずに購入でき、AmazonのBuy for Meは外部サイトを巡回して代理購入します。

    自社サイトへの訪問数が、これまでどおり売上の先行指標であり続けるとは限りません。

    事業者側の対応は、大きく3つに整理できます。

    あわせて、販売者としての立場をどう保つかが業界側の論点になっています。エージェント経由で売れた場合でも、事業者が販売者であり続ける設計が必要だという議論です。

    IMF (2026)も、デジタルウォレット事業者に向けた対応策として、エージェントを介しても加盟店が販売者の立場と顧客との関係を維持できる設計を紹介しています。

    EC・D2C事業者にとっても、同じポイントが重要になります。誰が顧客データを持ち、誰が価格と返品条件を決めるのかという問題に直結するためです。

    【変化2】価格・条件の比較が徹底され、「選ばれる理由」が求められる

    AIエージェントは人間よりも徹底的に価格や条件を比べます。価格競争の圧力は強まる一方で、価格以外の「選ばれる理由」の価値も高まります。

    比較が徹底されると考えられる根拠は、エージェントの動き方です。IMF (2026)によれば、エージェント型AIは商品検索、価格の比較、割引の適用、在庫確認、購入の実行までを一続きで進められます。

    取引の手間を小さくするはたらきもあります。人間はいくつかの店舗を見比べると、疲れてやめてしまう場合が多いです。AIであれば、疲れ知らずで調査を続けることが可能です。

    事業者側から見ると、価格や送料、在庫、納期といった条件が常に比較にさらされることになります。「たまたま自社サイトに来てくれた顧客」という前提が弱まります。

    ただし、悪いことばかりではありません。IMF (2026)は複数の先行研究を参照しながら、事業者側のメリットとして次の4点を挙げています(Yan et al., 2025; McKinsey, 2025)。

    比較が徹底される環境は、条件の良い事業者にとっては発見されやすくなる世界でもあります。

    打ち手は、

    といった「選ばれる理由」を、AIの比較軸に乗るようにデータとして表現することが必要です。

    ここで重要なのは、人間に向いている表現と、AIが解釈しやすい情報は異なるという点です。

    サイトの世界観でブランドストーリーを伝えることにはもちろん意味があります。ただしブランドストーリーの伝え方自体も、人間向けとAI向けで変わります。 人間には物語として受け取られる内容が、AIには検証できる事実の集まりとして届くためです。

    物語のままAIに渡すのではなく、比べられる属性に分解し直す作業が必要です。

    伝えたい価値具体的に示す情報
    つくり手と産地原産国、最終加工地、原料の産地、開示できる製造者名
    素材と製法主な素材、原材料、開示できる含有率、製法
    第三者による裏付け認証名と発行主体、受賞名と受賞年、試験機関と試験結果
    購入後の安心保証期間、修理対応の範囲、返品条件、補修部品の供給期間

    素材や保証期間、配送日数、レビュー評価なども、AIが読み取って比べられる形式に落とし込むことが求められます。

    逆に、

    は、AIによる比較・検討に乗せるのが難しいと考えられます。

    ただし、これらの情報は人間が持つ購入意欲を刺激する効果を持つため、「AIが読み取れないからサイトに載せない」のも適切ではありません。「人間にもAIにも選ばれる」ために、双方に向けた情報を整え発信するのが重要です。

    ▶︎関連記事 :AIによる比較・評価は、商品だけでなく投資先の選定でも取り入れられつつあります。AIによる判断が投資判断に与える影響を知りたい方は、下の記事もあわせてご覧ください!

    生成AIは「次のユニコーン」を見逃すのか? AIがVC投資の判断にもたらす影響を学術研究をもとに解説

    【変化3】新しい手数料や顧客との関係が採算を左右する

    AIエージェント経由の販売では、新しい手数料が発生するおそれがある点にも注意が必要です。返品や問い合わせの窓口をどこが担うかによって、採算の前提が変わります。

    この構造を考えるうえで参考になるのが、ChatGPTの手数料をめぐる一連の動きです。2026年1月には、ChatGPT内のチェックアウトで成約したShopify加盟店が、通常の決済処理費用に加えてOpenAIへ4%を支払うと報じられました。

    ところが同年3月、OpenAIは方針を変えました。2026年8月現在のShopify公式仕様では、ChatGPTは商品を見つけるためのチャネルで、購入は加盟店自身のオンラインストアで完了します。ChatGPTに関連する追加手数料はないとされています。

    この一連の動きが示すのは、手数料は、決済がどこで完結するかとセットで決まる という構造です。生成AIの画面において決済まで完結するなら、AIプラットフォームが手数料を取る根拠が生まれます。同時に、顧客データや返品、問い合わせの窓口もAIプラットフォーム側に寄ります。

    逆に、購入が自社サイトで完了する形なら、AIエージェントを使っても追加の手数料はかかりにくくなります。顧客との関係も手元に残ります。

    手数料と顧客との関係は、別々の論点ではありません。どちらも「決済がどこで完結するか」という同じ問いから決まります。先ほど説明した、販売者としての立場を保つかどうかが、ここで採算の問題として返ってくるということです。

    だからこそ、エージェント経由の販売を検討するときは、料率の数字だけを見ても判断できません。

    を、導入を検討する時点の公式情報で確認する必要があります。今後どのチャネルがどのような料率を設定するかは固まっていません。

    一方で、コストが増える方向の変化ばかりではありません。返品やカスタマーサービスの自動化は、コスト削減の要因になります。

    IMF (2026)が引用するGartnerの予測では、2029年までに一般的なカスタマーサービス対応の80%を、AIエージェントが人手を介さず解決するとされています。あくまで予測であり、実績ではない点には注意が必要です。

    【変化4】自社もAIに支払わせる側になり、支出規模のコントロールが新しい課題に

    AIエージェントに社内の支払いを任せるようになると、これまで人が1件ごとに承認していた支出が、まとめて広く権限を預ける形に置き換わります。支出のコントロール方法を設計し直す必要が出てきます。

    たとえばIMF (2026)では、倉庫での業務を例にした場面を紹介しています。

    という業務フローになる見通しです。

    IMF (2026)によるリスク分類表の冒頭で紹介されているのが「指図ギャップ」です。これは、取引の指示の出し方に関する構造のずれです。従来の制度は、取引ごとにはっきりした指示があることを前提とします。エージェント決済では、まとめて預けた権限に基づいて、個々の支払いを実行します。AIが言葉を読み違えることではありません。

    IMF (2026)は、このリスクが生まれる原因として、広い権限をAIに預けた口座保有者と、取引ごとの指示なしに支払いを実行するAIエージェントを挙げています。

    そして費用を負う者として、

    それぞれ背負うことになると整理しています。自社の支払いをAIに任せる事業者は、「口座保有者」の立場に立ちます。なお、IMF (2026)のリスク分類表にEC事業者や加盟店という記載はなく、自社が当事者になる場面として読み替えました。

    追跡可能性も論点です。誰がどの権限でその支払いを通したのかを後からたどれないと、問題が起きたときに説明できません。

    責任の所在についても、いまの仕組みは「人が意図して行ったことと、支払いの結果がつながっている」ことを前提とします。そのため、AIがほぼ自分の判断で動いた場合の責任の分け方は明らかでないと、IMF (2026)は指摘しています。

    agentic-commerce-payment-guide_04.png

    事業者がとれる打ち手は次の4つです。

    いずれの解決策も、3層モデルの第2層を自社の中に持てばよい、という発想に基づいています。

    エージェンティックコマースへの対応にいくらかかるのか

    エージェンティックコマースへの対応費用は、

    の3つに分けて考えると、投資判断の見通しが立ちやすくなります。

    コストは初期費用・運用費・取引手数料の3つに分かれる

    初期費用は、エージェンティックコマースへの対応を始めるために必要なコストです。具体的には、商品情報の構造化、データ基盤の整備、対応プラットフォームへの接続開発などが含まれます。

    商品数が多く、型番や属性の表記がばらついていると、整備する手間は大きいです。既存の商品カタログの状態によって、内製で済むか外注が必要かが分かれます。

    運用費は、対応を続けていくために継続的に費用がかかります。たとえば、在庫・価格情報とAIエージェントとの連携を保つことです。対応先が増えるほど、開発・運用にかかる負荷は積み上がり、担当する人材も必要になります。

    取引手数料は、売れた分だけ発生するコストです。AIチャネルやプラットフォームごとの成約手数料がこれにあたります。

    費用の種類性質主な内訳
    初期費用立ち上げ期に一度きりの固定費商品情報の構造化、データ基盤整備、接続開発
    運用費継続的に生じる固定費在庫・価格の連携維持、開発・運用の負荷、担当人材
    取引手数料売上に連動するコストAIチャネルごとの成約手数料。設定の有無と料率は契約・時点により異なる

    判断の目安は、AIエージェントへの対応によって新たに見込める粗利が、追加でかかる費用を上回るかどうかです。

    ただし、カタログ全体とすべてのチャネルを一度に試算すると前提が増えすぎて、精度の低い見積りになりかねません。

    対象商品とチャネルを限定して、小さな範囲で確認するのがおすすめです。その範囲で生じる初期費用・運用費・取引手数料と粗利を突き合わせます。

    たとえば、商品情報がある程度整った事業者を想像してください。売れ筋カテゴリーにおける一部の商品を、1つのAIチャネルに接続する場合を考えます。

    国内で公開されている小規模な開発・実装支援の料金を踏まえると、初期費用は50万〜200万円程度が1つの参考になります。ただし、基幹システムの改修や月額運用費、取引手数料は含まれません。

    先行投資には成果が出るまでの時間差がある

    エージェンティックコマースへの対応は、売上への効果が表れるまでに時間差のある先行投資です。

    は、いずれも着手してすぐ売上が立つわけではありません。

    さらに、EC・D2C特有の事情も重なります。この種の投資は、在庫仕入れや広告費と同じ時期に重なりやすく、手元の資金繰りが厳しくなりがちです。

    IMF (2026)は、かつて数年を要した変化が数か月で起こり得ると指摘しています。変化のスピードが高まっている現状を踏まえると、これまで以上に動向をこまめに追う必要があります。

    技術的な要件だけでなく、採算と資金計画についても考えておかなければなりません。

    対応投資に向けた資金調達手段を使い分ける

    エージェンティックコマースへの対応にかかる初期費用や運用費を、手元資金だけで賄えない場合もあります。そのときの調達手段は、大きく次の3つに整理できます。

    株式調達は、返す必要がない資金を厚く確保可能です。一方、実行までに時間がかかり、既存株主の持分が希薄化します。エージェンティックコマースへの対応においては、

    などに向きます。

    融資は資本コストを抑えやすい手段です。一方で、審査が必要で、担保や既存の借入枠との兼ね合いが生じる場合もあります。すでに売上基盤がある事業者が、AI対応に向けた投資の総額を抑えたいときに検討しやすいです。

    RBF(レベニュー・ベースド・ファイナンシング)は、将来の売上予測を裏付けにした、希薄化を伴わない調達手段です。支払い方式は提供会社によって異なり、売上連動型と定額型があります。Yoii Fuelは定額型であり、支払い額が売上に応じて変動することはありません。

    など、回収期間が読める短〜中期の支出に向きます。目安として、最短で2週間で資金を受け取れるため、スピード感のある調達にも向きます。

    ただし、売上実績が乏しい創業直後や、回収が長期にわたる大型投資にはあまり適しません。

    調達手段希薄化調達に向く場面
    株式調達ありデータ基盤の刷新、複数AIチャネルへの長期対応
    融資なし実績ある事業での対応投資、資本コストを抑えたい場合
    RBFなし商品データ整備・単一チャネル接続など短中期の支出

    常に優れている調達手段があるわけではありません。以下に挙げる項目によって、選ぶべき手段を検討しましょう。

    ▶︎関連記事 :海外ではRBFの活用がどこまで進んでいるのか、市場の成長と最新の事例を整理しています。RBFを詳しく知りたい方は、下の記事もあわせてご覧ください!

    【2026年最新】海外RBF市場の成長と最新事例を解説! スタートアップの資金調達と日本のRBF市場の展望は?

    株式会社Yoiiについて

    株式会社Yoiiは、RBF(レベニュー・ベースド・ファイナンシング)という新たな資金調達の方法を提供しています。 RBFは、将来の売上予測をもとに資金を調達できるサービスです。 株式調達や融資などの伝統的な資金調達手段とは異なる、新しい選択肢を提供し、多くの企業から喜びの声をいただいています。

    新たな取り組みにチャレンジするうえで、事業戦略や資金調達など、経営者は日々悩ましい問題に直面しています。今回紹介したエージェンティックコマースへの対応をはじめとする先行投資も、背景には経営者の資金繰りをめぐる悩みがあります。しかし、このような問題に取り組むうえで必要な情報がなかなか見つかりません。 何を考えどう取り組めばよいかが分からず、苦しんでいる企業も多いと感じています。

    株式会社Yoiiは、経営戦略や資金調達に関する情報を発信し、学び合える環境づくりに貢献していく所存です。 より多くの人が新たなビジネスに挑戦し、成長できる社会を一緒につくりあげられれば、これほど嬉しいことはありません。

    ※免責事項

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    参考記事

    CNBC "Amazon ditches Rufus AI chatbot in favor of Alexa shopping agent"

    Gartner "Gartner Predicts Agentic AI Will Autonomously Resolve 80% of Common Customer Service Issues Without Human Intervention by 2029"

    Google Cloud 「エージェント決済プロトコル(AP2)の発表」

    IMF (2026) "How Agentic AI Will Reshape Payments" (IMF Note 2026/004, Davidovic and Tourpe)

    Mastercard "Mastercard unveils Agent Pay, pioneering agentic payments technology to power commerce in the age of AI"

    Mastercard 「日本市場で初となる本番環境でのエージェンティック取引を実施」

    OpenAI "Buy it in ChatGPT: Instant Checkout and the Agentic Commerce Protocol"

    OpenAI "Powering Product Discovery in ChatGPT"

    PayPal "PayPal to Acquire Cymbio, Accelerating Agentic Commerce Capabilities"

    PYMNTS "Shopify Merchants to Pay 4% Fee on Sales Made Through ChatGPT Checkout"

    Shopify 「ChatGPTのエージェンティックストアフロント」

    Stripe 「Agentic Commerce Protocol(ACP)ドキュメント」

    TechCrunch "OpenAI's plans to make ChatGPT more like Amazon aren't going so well"

    Visa "Find and Buy with AI: Visa Unveils New Era of Commerce"

    よくある質問

    監修:新居 理有

    京都大学にて博士(経済学)を修得。2011年から複数の大学に勤め、2023年から龍谷大学経済学部准教授。主な専門分野はマクロ経済学や財政政策。

    新居 理有

    デットでもエクイティでもない新たな資金調達手段でSaaS企業を支援

    Yoiiでは、このRBFの考えを基にしたSaaSやD2Cなどのスタートアップ企業に成長を加速するための独自のアルゴリズムを用いた未来査定型資金調達プラットフォーム「Yoii Fuel」を運営しています。

    Yoii Fuelの資金調達画面が表示されたノートPC

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